2022年8月  4.中小機構
 今月の教皇のビデオで「最高の創造性が常に生まれる場所である底辺から物事を変えるために、想像力に満ちた働きをしています」と述べられていることからも理解されるように、小規模事業は地域の発展のためになくてはならない大切な存在です。しかし、経済的な基盤が弱いため、小規模事業を育成していくためには様々な助成や支援が必要です。
 わが国の政府には、経済産業省の外局に中小企業庁があります。その目的は「健全な独立の中小企業が、国民経済を健全にし、また発達させるものであり、企業を営もうとする者に対して、公平な事業活動の機会を確保するものであるということから、中小企業を育成し、発展させ、その経営を向上させるに足る諸条件を確立すること」にあります。そして、具体的な施策を実行するために、2004年に国の中小企業政策の中核的な実施機関として独立行政法人中小企業基盤整備機構を発足させました。これは略して「中小機構」と呼ばれ、「Be a Great Small.」を標榜して、「規模の大小に関係なく、偉大な価値を生み出す、かけがえのない存在」として中小企業を表現するとともに、中小企業へのリスペクトを込めて活動しています。
 中心的な事業のひとつとして、約159万人の事業主が加入する小規模事業共済があります。国が運営する事業主のための退職金制度ですが、掛金が全額所得控除となり、一括で受け取る共済金は退職所得扱いになる税制面で特別な配慮がなされており、掛金の10倍までの融資が可能で、約1兆8,900億円の貸付実績をあげています。
 中小企業を営む人々に共通して言えることは、その事業を行うための専門の知識を蓄えていても、経営一般についての知識が乏しいことがあげられるでしょう。日本には公的な機関としてこの弱点を補う仕組みが整っていますので、多くの経営者がこれらの情報を有効に活用して、社会に貢献することを願ってやみません。
 わが国ばかりでなく、社会を根底で支えている世界中の小規模事業が、その専門性を充分に発揮するために、事業を継続的に展開することができるようにと、教皇の意向に心を重ねて、祈りをささげていまいりましょう。