2022年9月  2.一病息災
 国民の祝日である敬老の日が9月にあることから、日本の教会は「高齢者」を意向として取り上げ、「生き生きと生活できますように」と祈るよう呼びかけています。
 高齢になると、体力も気力も少しずつ落ち、血圧が上昇したり血糖値が高くなったりして、病気は何一つしたことがなく元気な「無病息災」の状態を保つことが難しくなります。
 「一病息災」という言葉もあります。広辞苑を引くと「無病で健康な人よりも、一つぐらい病気のある人の方が健康に気を配るので長生きできるということ」とあります。これは「無病息災」をもじったもので故事来歴のある言葉ではありませんが、ある意味で真理を表していると言えるでしょう。健康状態がどうであるか、常に気を配って、食べ物の量やバランスを考え、適度な運動を心掛けるなど、生活習慣に配慮した日々を重ねるように、心掛けることになるからです。
 生活習慣の改善によるがん予防の重要性を説いていた、生命科学振興会の理事長である渡辺昌氏は、空腹時の血糖値が260と基準値よりも100も上回りすぐに入院治療を必要とする糖尿病だと診断されたときに、糖尿病への取り組みを投薬主体の治療ではなく、それまでの不摂生を改めることに努めることで対応し、1日1600カロリーの食事、1万歩の歩行、週3回の水泳という独自のメニューを考案して実行し、1年で体重を78sから65sに落とし、血糖値も正常値となり、さらに肩こりや足の疲れも解消した、という有名な逸話があります。
 いつごろからこの言葉が用いられるようになったかは定かではありませんが、1985年の厚生白書にはすでに「『無病息災』だけを健康として狭くとらえるのではなく、『一病息災』も健康として広くとらえる意識が定着していくことが望まれる」との記述があります。最近の厚生労働白書でもこの路線を踏襲しており、一病息災は健康行政の根幹をなしていると理解されます。
 息災は仏教語で、「身の災厄を息(や)む」こと、つまり災いを止めることを意味していて、今日では、身に災厄が無いこと、無事の意味に用いています。病気でありながら健康を維持するといった一見矛盾のように思われる四字熟語ですが、病気であっても「生き生きと生活できますように」と、ともに祈りながら過ごしてまいりましょう。