2022年9月  3.日弁連は死刑反対
 日本弁護士連合会、略称日弁連(にちべんれん)は、1949年に弁護士法第45条から50条に基づいて設立された職能団体で、弁護士等は日弁連の定めた会則に従わなければならい、厳格な自治組織です。
 日本において弁護士・外国事務弁護士として活動するには、事務所を置く地域の単位会に必ず加入が義務付けられていて、単位会は弁護士資格をはく奪する懲戒の権限を有しています。単位会は全国に52あります。東京には事務所を置く弁護士が多いことから、東京弁護士会(通称とうべん)と、第一東京弁護士会(通称いちべん)、第二東京弁護士会(通称にべん)の3つがあります。また広大な面積である北海道には4つの弁護士会、その他の府県は1つずつで、合計52となります。日弁連は、この単位会と弁護士当人を主たる会員として組織されていて、日本の司法制度の中で、極めて重要な役割を担っています。
 その日弁連は、はっきりと死刑制度に反対する立場を表明しています。
 今から20年前、2002年に日弁連は「死刑制度の存廃につき国民的論議を尽くし、また死刑制度に関する改善を行うまでの一定期間、死刑確定者に対する死刑の執行を停止する旨の時限立法の制定を提唱する」という趣旨の「死刑制度問題に関する提言」を発表し、2004年には人権擁護大会において、「死刑執行停止法の制定、死刑制度に関する情報の公開及び死刑問題調査会の設置を求める決議」を採択しました。さらに、2011年には同じく人権擁護大会において「罪を犯した人の社会復帰のための施策の確立を求め、死刑廃止についての全社会的議論を呼びかける宣言」を採択しています。そして、2016年の人権擁護大会で「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択しました。
 しかし、今日に至っても、日弁連の提言や宣言は一向に生かされず、死刑執行も死刑判決も継続しています。その1つの理由は、世論の動向にあります。少し古い資料ですが、内閣府が2019年11月に実施した世論調査によれば、「死刑もやむを得ない」という回答が80.8%(2014年は80.3%)でした。また、仮釈放のない「終身刑」が新たに導入されても「死刑を廃止しないほうがよい」と答えた割合が52.0%(2014年は51.5%)となっています。「自らの死をもって罪を償う」という切腹が美化される文化にあっては、死刑が基本的人権を侵害しているという視点から制度の矛盾をとらえるといった世論の形成が、とても難しいことを示している調査結果です。
 日弁連は、問題提起や情報発信・シンポジウムの開催など、様々な取り組みをとおして啓蒙活動を進めています。私たちの生命と財産を、市民の側に立つ法の番人として護っている弁護士の方々が、このような形で「命の尊厳」を守る努力をしています。
 教皇は今月のビデオの中で、「死刑廃止のために行動するように」呼びかけています。今週は、死刑廃止のためにどのようなことができるかを心におきながら、世界中のすべての善意ある人々と心を合わせて、命の尊厳が守られるようにと、祈りをささげてまいりましょう。