2022年11月  1.里親制度
 教皇は「苦しんでいる子どもたち」の意向を掲げ、「家庭の愛に触れる機会に恵まれますように」と祈るように奨めています。意向の文言にあるように、さまざまな理由で、実母、実父と一緒に生活することができなくなった子どもたちがおり、日本でのその数は約4万6千人あまりとなっています。
 児童福祉法の第1章総則第1条にある、「全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのっとり、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され、保護されること、その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有する。」という趣旨で、家庭から離れて生活せざるを得ない子どもたちのために、児童養護施設が全国で600か所設置され、現行では1歳から18歳までの子どもたちが、共同生活を送っています。
 子どもが成長する過程においては特定の信頼できる大人との間での愛着形成がとても重要です。そのため、より多くの子どもたちが家庭と同じような環境で生活することができる里親やファミリーホームにおける養育が推進されています。そのために設けられたのが、里親制度です。あたたかい家庭を必要としている子どもたちに、安心感と健やかな育ちを提供することが重要だからです。1割弱、4千人ほどの子どもたちが、この制度のもとで暮らしています。では、里親制度とは、どのようなものなのでしょうか。
 日本では実親との親子関係も残しながら第三者との親子関係を結ぶ普通養子縁組と、子どもの福祉のために実親との法律上の親子関係を解消して養親と法律上の親子関係を結ぶ特別養子縁組があります。里親制度は、この養子縁組とは異なり、一定期間自分の家庭で子どもを養育する制度です。親子になるわけではありませんが、実の親が育てることができない間、子どもの成長を支える大事な存在です。期間は、子どもの状況によりさまざまです。そして、重要なことは、子どもを養育することに対する手当や生活費、教育費など養育に必要な費用が自治体から支給されることです。生活に困窮していないなどの条件はありますが、裕福でなければなれないということはありません。
 里親制度は、あまり知られていません。厚生労働省も、公益財団法人全国里親会でも、この制度を知ってもらおうと、全国的なキャンペーンを行っています。
 教皇の意向に心を合わせて祈るとともに、里親制度に対する理解を深め、自らが里親になる可能性についても思いをいたして、この一週間を過ごしてまいりましょう。