2022年11月  3.大人が築いたシステム
 今月の教皇のビデオで、子どもたちの声は「私たち大人が築いたシステムを恥じる叫びです」と教皇フランシスコは語りかけています。心が痛い言葉です。意向文にある「苦しんでいる子どもたち、とりわけ家を失ったり、孤児となったり、戦争の犠牲となった子どもたち」の存在は、私たち大人の責任なのです。さらに、私たちが築いたシステムで、苦しんでいる子どもたちが「搾取されていることに目をつぶっています」と教皇のきつい言葉が続きます。
 ですから、「教育を受けることを保障され、また家庭の愛に触れる機会に恵まれ」ることは、私たち大人が責任をもって取り組まなければならない、最優先の課題です。
 では、私たちの社会のシステムは、どのような原理で動かされているのでしょうか。第一には「民主主義」です。一人ひとりの人間の人権が尊重されると同時に、自分が所属する社会に自分の意見を反映する権利を有していて、主に政治のシステムの中で、多数の賛同を得られた道を歩むような仕組みになっています。問題点や、課題も多い中で、今の私たちが運用できる政治における意思決定のシステムは、この民主主義をおいてほかにはありません。
 しかし、多数の意見を採択すれば、少数者や弱者、特に、高齢者や子ども、そして病人や障がい者、さらには社会の周辺に追いやられた人々の権利・利益は、ややもすると後回しにされてしまいます。
 もうひとつの原理に、「資本主義」があります。生産手段を資本家が所有し、労働者の人的資源を用いて生産を行い、利益を追求する経済体制です。しかし、誰かによって計画・管理されるシステムではないので、制御しないと所得格差・失業・恐慌など様々な問題を発生させてしまいます。資本主義の欠陥が生み出す諸問題に対し、政府は経済への介入や政策の実行によってその解消・緩和を図るべきだとする、修正資本主義の考えが生まれ、現在の先進資本主義国はこのシステムを採用しています。具体的には税を徴収して社会保障や社会福祉の財源とするなどの、利益の再分配を行っています。
 しかし、この政治による資本主義の制御にも限界があって、諸制度で救済ができない領域では、民間の組織やボランティアなどが、活動しています。
 根本的な矛盾を内包した私たち今の大人が築いたシステムは、もはや限界に来ています。地域紛争が収束せず、核の脅威も高まり、ましてや戦争が起こるという事態にまでなっており、この世界を受け継ぐ、私たちの宝である子どもたちにまで、その犠牲がのしかかっています。
 子どもたちの幸せを願って、祈りをささげましょう。そして、今、私たちが築いたシステムを、世界の平和、地球環境の保全に向けて作り変えることができるように、工夫や努力を重ね、祈りをささげてまいりましょう。