2022年11月  4.無国籍の子どもたち
 すべての子どもは、出生後ただちに、国籍を取得する権利を有しています。これは「子どもの権利条約」の第7条にはっきりと記されています。しかし、法務省の統計によれば、2019年末の時点で、日本には213人の無国籍の子どもたちがいます。
 その理由は様々ですが、外国籍の女性が未婚で日本で出産した場合や、両親がともに外国籍の場合、日本の役所に出生届を提出しただけでは、親の国の国籍を取得したことにはなりません。また、世界には、出生地主義をとる国や婚外子に差別的な国もあり、日本で生まれた子どもの出生届を受け付けない外国公館もあります。
 親の本国で届出がされていない場合は、日本で発行する「在留カード」の国籍欄には国名が記載されていたとしても、国籍が取れていることになりません。つまり、無国籍の状態となりますので、パスポートの取得ができないなど、さまざまな不利益をこうむることもあります。特に、母親が亡くなるなどの事情で本国とのつながりが途切れると、国籍を取得することが困難になり、無国籍状態が次の世代に連鎖することもあります。このように、国籍は「権利をもつ権利」と言われ、国による保護を受けるために必要となるだけでなく、子どもたちのアイデンティティの核になる大切な権利です。
 世界に目を向けてみると、無国籍の子どもの正確な人数は把握できないものの、ヨーロッパ域内の無国籍者の数は50万人以上と推定されます。ヨーロッパで難民保護申請をした子どもの数は2010年から増加し、2015年と2016年にピークを迎えました。「無国籍者」だと確認された子どもの数も同様に増加しています。2017年には、2,100人の子どもが「無国籍者」として登録されており、この数は2010年と比較して4倍になっています。
 ユニセフとUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)は、低コストで効果的、そして持続可能な解決策を、各国政府に提案しています。その内容は、「国籍を持たない難民・移民のすべての子どもたちが、ヨーロッパに到着した際に、確実にかつ適切に認定され保護を受けられるようにすること」、「すべての無国籍の子どもたちが可及的速やかに国籍を取得できるよう手続きを簡素化すること」、「国内で生まれて無国籍になりかねないすべての子どもたちに国籍を付与する対策を含めるよう法律を整備・改正すること」となっています。
 出生登録を通して、すべての子どもたちが法的な身分証明を得ることは、持続可能な開発目標(SDGs)のターゲットの1つです。教皇の意向である「苦しんでいる子どもたち」のために祈る中で、無国籍についても思いをいたし、すべての子どもが権利の礎(いしずえ)である国籍を取得することができるようにと、心を合わせて祈ってまいりましょう。