2022年12月  2.相対的貧困とは
 日本では子どもの7人に1人が貧困状態にあるといった報道がなされています。ここで用いられている貧困状態とは、人間として最低限の生活を維持することが困難な状態に置かれている「絶対的貧困」のことではなく、その国の文化水準、生活水準と比較して困窮した状態にある「相対的貧困」を指しています。
 具体的には、世帯の所得が、その国の等価可処分所得の中央値の半分に満たない状態のことです。等価可処分所得は、世帯の総所得から税金と社会保険料を差し引いた額、つまり手取りの収入を、世帯人員数の平方根で割った値として計算されます。したがって、例えば世帯収入が500万円の4人家族で、所得税、住民税、固定資産税などの拠出した税金と健康保険や厚生年金などの保険料の合計が100万円だとした場合、400万円÷√4で、その世帯の等価可処分所得は200万円と計算されます。世帯人数ではなく、その平方根で割るのは、世帯人員が少ない方が生活コストが割高になることを考慮して標準化するためです。
 2015年時点の少し古い数値ですが、OECDの基準によると、相対的貧困の等価可処分所得は122万円以下、4人世帯で約250万円以下となっていましたので、先の例で示した500万円の収入があっても相対的貧困に該当することが分かります。そして、7人に1人の子どもがこの状態に置かれている日本の状況は、おなじOECDの調査によると、先進34カ国中10番目に貧困率が高くなっていました。等価可処分所得の中央値の半分に満たない状態である世帯の比率が貧困率ですので、経済的格差が大きい状態にあるといえます。
 この格差を生む最大の要因とされているのが、雇用の形態です。同じ労働であっても非正規雇用であったり、有期の雇用や就労日数や時間が短いパートタイマーであったりして、労働の対価による賃金が低く抑えられていることによります。政府は「働き方改革」を進め、同一労働同一賃金の施策を推進していますが、経済格差はいっこうに縮まりません。
 この相対的貧困では、例えば、親が病気のために家事をしなければいけない子ども、食費を切り詰めるために母親が十分に食事をとっていないという子ども、金銭的な理由で大学進学を断念する子ども、家計を支えるため毎日のようにアルバイトをしている子どもなどが数多く存在している状況をもたらします。相対的貧困は、その家屋の外からは見えにくいことも、この問題の解決を難しくしている一つの要因です。
 日本の教会の意向は、「苦難の中にある子どもたち」です。日本にある貧困、そしてそれが子どもたちの将来を暗くしている現実を、はっきりと認識して、まずはその状況が改善されるように祈り、そして、具体的にできる小さな支えは何かを考えて生活する一週間といたしましょう。幼子イエスが、もしこのような状況におかれていたならば、私たちは何をなすべきかを、祈りの中で探してまいりましょう。