2022年12月  3.子どもへの虐待
 子どもへの虐待の件数は、増加する傾向が続いていて、2021年度の速報値では、全国の児童相談所が対応した件数が20万7659件と過去最多を更新しました。2020年度の統計では、虐待によって死亡した子どもは、77人、このうち親子心中が28人でしたが、残りの49人のうち0歳児が32人でした。
 この秋、政府は児童相談所の職員を2023年度からの4年間で2000人ほど増員する方針を固めました。さらに、関係する府省庁の会議を開き、体制強化のための新プランを正式決定する予定です。新プランでは2023〜2024年度の2年間で児童福祉司を現在の5780人から6850人に1070人増やし、また、児童心理司は23〜26年度の4年間で現在の2350人から3300人へと950人増やすことになります。国が増員計画をつくることで、現場を担う自治体の体制強化を後押しする計画です。
 しかし、このような対応策が講じられるだけでは、児童虐待を減少させることは難しいと考えられます。虐待が起きている状況に対応するだけでなく、虐待が起こらないような、親への指導が求められてしかるべきです。さらには、妊娠や出産についての知識や、性や人間の尊厳についての認識を、若い世代に伝えていく努力も必要となります。
 親による子どもへの虐待は、DV(ドメスティック・バイオレンス)のひとつで、家庭内の閉鎖された空間の中で生じることであるがゆえに、近所で暮らしている人々にも、気づかれないことが多々あります。虐待の事実を把握できなければ、児童相談所が対応することもできません。ですから、私たちの身の回りに暮らす人々に関心を寄せ、何らかの異常に気付くような姿勢が求められています。近所の目が行き届いていた時代では、子どものことばかりでなく、高齢者や障がい者に対する気配りもなされていました。人間同士のかかわりが薄れた都会の生活で、人々が孤立して生活するようになった今日だからこそ、隣で暮らす人との交わりを大切にしなければならないのでしょう。
 日本の教会の意向は、「苦難の中にある子どもたち」が「ふさわしい援助を得ることができ」るように祈ることです。この一週間をこの意向に心を合わせて過ごしてまいりましょう。そして、子どもたちが苦難にあうことがないような地域社会の再生に向けて、心を尽くしてまいりましょう。