2022年12月  4.児童養護施設
 日本の教会の意向「苦難の中にある子どもたち」に心を合わせて祈るとき、思い描く場面のひとつに、児童養護施設があります。社会的養育を必要とする子どもたちは、憲法が保障する基本的人権に基づき、乳児院(145か所に2,472名)や児童養護施設(612か所に23,631名)または里親家庭(6,019名)やファミリーホーム(1,688名)等で養護されていますが、児童養護施設が果たす役割は大きな位置を占めています。
 子どもは、特定の大人との愛着関係の下で養育され、安心感の中で自己肯定感を育み、基本的信頼感を獲得でき、家族のありようを学んで将来家庭生活を築く上でのモデルとすることが生育家庭での重要なポイントとなり、養護が必要な子どもは里親家庭で保護養育されるケースが諸外国では多くなっています。オーストラリアは92.3%、カナダは85.9%、米国は81.6%、英国73.2%、香港57%が里親委託であるのに対して、先に示した養護されている子どもの人数でも明らかなように、日本では21.5%に過ぎません。日本の場合、子に対する親の権限が強く、親の意向で、親が子に会いたいときに会えるようにと児童養護施設での養育を望む場合があるなどの理由によります。
 国は里親制度の活用を推進しようとしていますが、日本古来の伝統的家族観、養育費用の負担等の課題もあり、依然として児童養護施設に託す状況が続いています。さらに、社会的養育を必要とする児童数は増加の傾向にあって、児童養護施設等での保護養育のニーズはますます高まる状況になっています。
 児童養護施設、乳児院ともに設置数は増加傾向にありますが、施設で勤務する職員数は充分な水準にはなく、経験の浅い職員に対する児童福祉司への教育支援も行われているものの、職員一人ひとりの負担は相当に重い現実があります。
 このような社会的背景の中で、昼夜問わずに懸命に子どもたちのために献身的に働いている施設職員に感謝の気持ちを抱き、またその方々が健康な日々を過ごすことができるように祈りましょう。そして、子どもたちが愛情にあふれた環境で成長できますようにと、心を至してまいりましょう。