2023年3月  4.不同意性交罪
 政府は今月14日、性犯罪の成立要件を明確化する刑法改正案などを閣議決定しました。その内容は、強制性交等罪の名称を「不同意性交罪」に変更して、処罰対象となる8つの具体的な行為や状況を例示したものです。「性交同意年齢」も13歳から16歳へ引き上げて変更しています。また、性的部位の盗撮などを取り締まる「撮影罪」も新設するとしています。
 その中で新たな名称として用いられている「不同意性交罪」は、強制性交等罪と準強制性交等罪を統合し、その犯罪の要件として「暴行・脅迫を用いる」に加え「アルコール・薬物を摂取させる」「恐怖・驚がくさせる」などの行為を列挙しています。このことによって「同意しない意思」の「形成、表明、全う」を困難な状態にさせた場合でも、処罰できるものとしました。これまでの刑法では、強制性交等罪の成立要件として「暴行・脅迫」を規定していて、被害者の抵抗を著しく困難にさせる行為と解釈されているために、裁判では被害者の抵抗の程度が争われるケースがあり、性犯罪を適切に処罰できないとの指摘がありました。
 このように、法制審議会では、1月に試案の修正が行われ、2月に改正に向けた要綱案がまとめられ、今月の14日の閣議決定までに至った道筋は、極めて迅速な審議だったということができるでしょう。
 性的暴行の被害者が、泣き寝入りすることの多かった状況が、少しでも改善される方向は好ましいのですが、一方で被害を届け出ることを躊躇せざるを得ない文化的背景も日本社会には残っています。「強姦」という厳しい語感をもつ用語を用いず、「セクシュアル・ハラスメント」と置き換えることによって、被害を受けて事実を公表しやすくなったとは言え、まだまだ一人で苦しんでいる被害者もいることを心に止める必要があるでしょう。
 刑法の改正が、犯罪の抑止につながることはもちろんのこと、改正された新「不同意性交罪」の適用に際しては、被害者への細やかな配慮が、大いに求められます。
 今月の意向に、心を合わせて祈り、刑法改正が今国会で成立することを、願い求めてまいりましょう。