2023年4月  1.非暴力コミュニケーション
 新年度を迎えて、新しい環境の下で第一歩を歩み始めた方々が、一つひとつの事柄に誠実に向かい合って、識別を重ねて生活を組み立てていくことができるようにと見守り支え、また、祈りをささげてまいりましょう。
 世界情勢に目を向けると、ウクライナへのロシアの軍事侵攻については解決の方向を見いだせない状況が続き、北朝鮮によるミサイルの発射実験も頻発しています。力による現状変更は認めないとの一貫した主張を続ける日本政府ですが、武力による攻撃から日本の国土、国民を守ることができるようにと、防衛費の予算を増やして、武器を増強しています。
 教皇の意向は非暴力です。児童虐待のような場面での暴力も、戦場で行われている殺戮の暴力も、相手の人格を否定して、人間をもののように扱う非道の行いです。私たち一人ひとりの心の中に潜んでいるこの暴力への誘(いざな)いを、私たちはどのようにして退け、常に平和に向けて歩みを続けることができるのでしょうか。
 一つの考え方として、非暴力コミュニケーションという手法があります。これは、マーシャル・ローゼンバークという心理学者によって体系づけられたもので、相手とのつながりを持ち続けながら、お互いのニーズが満たされるまで話し合いを続けていくという、共感をもって臨むコミュニケーションの方法です。実際の方法としては、観察・感情・欲求・要望の4つの段階に分けて、コミュニケーションで起きている問題やズレを整理していきます。 感情や欲求を相手に伝えたことで、心と心がつながることは、この方法の良い点ですが、心を病んでいる人たちは、感情や欲求を自分で整理することができない点など、課題も残されています。
 私たちの心の中にある暴力への誘いを悪の力として理解し、それを断ち切ることができるように識別を重ねていくことが、私たちキリスト者の非暴力の道ではないでしょうか。非暴力コミュニケーションが注目している感情や欲求について、自分自身の中で生まれるそれにも気づきながら、アガぺの愛を実践していくことができるようにと、祈りをささげてまいりましょう。