2023年5月  2.聖母マリアのように
 日本の教会は、「子どもたち」を祈りの意向に掲げて、「聖母マリアの心を心とすることができますように」と祈るように奨めています。5月は聖母月です。そして5月5日は端午(たんご)の節句にあたることから、国民の祝日である「こどもの日」と制定されています。子どもたちのこと、聖母マリアのことを心にとめながら、夏に向かって暖かい日差しがまぶしく感じられる日々を過ごしてまいりましょう。
 キリストの救いのわざに協力したマリアへの崇敬は、初代教会からすでに始まっていました。マリアは人間でありながらも、神の特別な恵みを受けて救い主・キリストの母となるために選ばれた女性です。神に対する心からの従順を生き抜いた者として、キリスト信者の生き方の模範とされています。そのことから、父なる神に祈りを取り次いでくれる助け手として、特別に崇められてきました。カトリック教会では「神の母聖マリア(1月1日)」「神のお告げ(3月25日)」「聖母の被昇天(8月15日)」「無原罪の聖マリア(12月8日)」などマリアに関係のある祭日が次第に導入されるようになったこともその背景にあります。
 5月を聖母月とする信心は、18世紀のイタリアで盛んとなりました。5月は若葉が芽吹いて春の訪れを感じさせてくれる時期でもあり、主の復活の喜びのうちに過ごす月でもあります。この月をマリアにささげ、マリア崇敬のために祈り続ける信心が伝統としてなされてきたことは当然のように考えられます。
 ところで、子どもたちに抱いてほしいマリアの心は、どのようにとらえることができるでしょうか。マリアについては、さまざまな神学的解釈がなされていますが、カトリック教会の伝統的なマリア信心である「聖母マリアの汚れなきみ心」においては、マリアの喜びや悲しみ、美徳や秘められてきた人間としての完全さ、そしてとりわけ神なる父を愛したこと、イエス・キリストへの母なる愛情を言い表すものとされてきましたが、それを一言で表すならば、「全人類を思いやる心」ということができるでしょう。
 東京教区司祭の故佐久間彪師が作詞作曲した「マリアさまのこころ」の1番では、「マリアさまのこころ、それはあおぞら、わたしたちをつつむ、ひろいあおぞら」と歌います。子どもたち一人ひとりが、全人類を思いやる、広い青空のような心に育つように、祈り願ってまいりましょう。