2023年6月  2.十字架のしるし
 私たちキリスト者は、祈りの初めに、右手の指で額、胸、左肩、右肩と順に触れながら「父と子と聖霊のみ名によって」と心の中で、あるいは口頭で唱え、そして「アーメン」と唱えます。キリスト教の信仰の中心にある三位一体(Trinity)の神の三つの位格(ペルソナ)に向かって心を整え、最もシンプルな方法で信仰告白を表明する、大切なしるしです。
 ほかでもなく、父は父なる神を指し、愛する独り子のイエスを世にお遣わしになった方です。子は、イエス・キリストです。三番目の聖霊は、ユダヤ教の中にも神の思いを現に伝える目に見えない力とされていますが、イエスが天に昇った後に、約束どおりに聖霊が降り注がれたことから、神の三つの位格の一つとされました。
 このキリスト教の教義は、ローマがキリスト教を公認した4世紀に、ニケアの公会議とコンスタンティノポリス公会議によって定められ、カトリック教会では「ニケア・コンスタンチノープル信条」として信仰されています。キリスト教の教えが統一されておらず、イエスは神の子ではないという解釈の教派も存在したので、信仰の体系を整理するのがこの会議の目的でした。そこでの聖霊についての一節は「わたしは信じます。主であり、いのちの与え主である聖霊を。聖霊は、父と子から出て、父と子とともに礼拝され、栄光を受け、また預言者をとおして語られました。」となっています。
 日本の教会の意向は「聖霊の恵み」です。父と子をつなぐ確かなきずなを、十字架を切るときの縦の動作で感じ取り味わってみましょう。そして左肩から右肩にかけて横の動きで、御父と私たち、イエスと私たち、そして、私たち間を目に見えない力でつなぎ、思いを伝えている聖霊を感じ取り味わってみましょう。