2023年8月  4.IAEA
 日本カトリック平和旬間が終わり、聖母の被昇天を祝った教会は、平和への願いを抱きつつ、特にウクライナでの戦争や他の場所での武力衝突が、一刻も早く終息に向かうようにと祈り続けることを、心してまいりましょう。
 また、核の脅威、原子力エネルギーの強大さにも、改めて気づかされる時でもありました。広島でサミットが開催された期に、ウクライナの大統領が原爆記念碑と資料館を訪れて、目に涙を浮かべられたことが報道され、6日の広島が、9日の長崎が被爆した日の式典で、改めて核兵器廃絶の思いを強くさせられました。
 福島第一原子力発電所に貯蔵されている汚染された処理水が、海洋に投棄されることになり、IAEA、国際原子力機構から調査団が派遣されて、安全性についての調査、検査が行われたことも報道されました。安全性が確保されたとの結論を得て、関係者にそして周辺諸国に説明を行うことになっていますが、科学的に証明された安全性と、安心という極めて人間的な感情とは、必ずしも一致するものではありません。真の平和は、戦い、争いの状況がなくなったことで実現されるものではなく、安全、安心が備わった平穏な生活を得て初めて実現されるものなのでしょう。
 さて、IAEAは、原子力発電所の安全性についてチェックする機関ではありません。核兵器の拡散を防ぎ、すべての国、特に開発発展途上国が原子力科学や技術を平和目的に、安全に安心して利用できるようにするために組織された国連の機関です。ですから、北朝鮮の核開発に際しても再三検査のために訪朝したことも含めて、1年に180か国あまりに2000回を超える現場検証を行い、核物質が平和利用の目的から転用されないように検証しています。
 原子力発電の燃料とされているウランやその過程で生じるプルトニウムは、実は核弾頭に転用が可能とされています。天然ウランの大半は0.7%程度の濃度ですが、原発で燃やせるように3〜5%に濃縮します。これが低濃縮ウランですが、さらに濃縮を重ねて、濃度を20%にした高濃縮ウランは、核兵器の燃料となります。ウランの濃縮技術によっては、保有するウランが兵器に転用される可能性があるのです。さらに副産物として生じるプルトニウムでも、高度な設計技術を用いれば、核兵器が製造可能だとする見解もあります。
 日本の教会の意向は「核兵器廃絶」です。原発用の核燃料、平和利用目的の核燃料が兵器に転用されないように、IAEAの活動に感謝し、また支援する心で、ともに祈りをささげてまいりましょう。