2023年9月  1.戦争による人権侵害
 ウクライナとロシアの戦争が終息しません。戦場では、敵の人命を奪って、自軍の支配地域を拡大することが兵士の任務となりますが、そもそも力づくで人を死に至らしめることは、人権の侵害です。
 たとえ人命を奪っても犯罪にあたらないものが三つあります。一つは死刑の執行、次は、自分の命を守るためにやむなく行ったことが原因で、結果的に人を殺(あや)めてしまった正当防衛、そして、戦場における戦闘行為です。ただし、戦闘行為の場合には、国際法上は、相手が兵士であることが条件となっています。民間人の命を奪う戦闘行為は、戦争犯罪となりますが、居住地区への攻撃は平然と行われています。ですから、戦争そのものが人権を侵害する元凶でしょう。
 教皇の意向は、「周辺に追いやられて生活する人々」です。生命を奪われるかもしれない恐怖のうちに生活し、地下室などに身を隠さなければならないだけでなく、住居が破壊されたり、敵の攻撃から逃れたりするために難民となることもしばしばです。教皇は「非人道的な環境の中で生活する人々」に目を向け、「社会の仕組みから見落とされたり、必要のない者として扱われたりすることがありませんように」と祈ることを奨めています。
 社会の中で、このような扱いを受ける人が無くなりますようにと祈るだけでなく、何の罪もない人々が、突然戦争によって日常生活を奪われてしまわないためにも、その苦しみ、痛み、辛さを受け止めながら、すぐにでも慰めの時が訪れますようにと、心を込めて祈ってまいりましょう。