2023年9月  4.ウチワサボテン
 世界各地で発生している洪水や渇水は、地球が悲鳴をあげている状態を如実に示しています。地球の温暖化はやがて海水面をさらに上昇させて、その結果として居住地域が水没し、国家の存続も左右するほどに深刻なものとなってきています。この待ったなしの状況に、あらゆる叡智を結集して、この地球の危機に対応しなければなりません。ところが、私たちの日々の生活は、温室効果ガスの発生を食い止めるには充分とは言えません。
 にわかに脚光を浴びている研究があります。その対象はサボテンです。日本では観賞用に栽培されているほかはあまり目にすることはありませんが、古くは紀元前からラテン・アメリカで多様な用途に利用されてきました。乾燥や高温に強く、厳しい環境でも栽培することができますし、食用や家畜の飼料としても利用されていました。アフリカでは、干ばつに際して人々や家畜のいのちが救われた例も報告されています。国連の食糧農業機関(FAO)は、食用サボテンの利用を推奨しています。
 このサボテンが、温室効果ガスの削減に有効だということが分かってきました。植物は、太陽の光を浴びながら空気中の二酸化炭素を葉緑素の力ででんぷんに変える光合成をおこなうことが広く知られていますが、でんぷんとして閉じ込められた二酸化炭素は、枯れたり焼却されたりすることによって、再び二酸化炭素となって空気中に戻ってしまいます。ところが、サボテンの場合は、吸収した二酸化炭素はシュウ酸カルシウムの結晶となって、半永久的に固定化されることが判明しました。これを「炭素固定能力」といいますが、サボテンを栽培することは、食糧や飼料として利用できるばかりか、二酸化炭素の低減、地球温暖化抑制にも効果があるということを示しています。
 愛知県の北西部に位置する春日井市は、サボテンの生産量日本一の自治体で、サボテンを使った料理で町おこしを進めています。そして、この町おこしと二酸化炭素の低減に取り組んでいる大学の研究室があり、サボテンの力を社会に役立てる取り組みとして「カンボジアの地雷除去地域におけるサボテン活用プロジェクト」に挑戦しています。地雷除去後の土地の有効活用は長年の課題となっていたようですが、厳しい環境にも耐えられ、しかも栽培も容易で人手もかからないことが注目されました。食糧や飼料への活用も期待されますが、ウチワサボテンの大規模なプランテーションを実現すれば、温室効果ガス削減に大きく貢献する可能性も秘めています。
 日本の教会は「地球温暖化を止めるために働く人たち」のために祈ることを奨めています。この研究室のサボテンへの取り組みは、さまざまな可能性を探っている研究のほんの一端に過ぎません。このような試みの一つひとつが実りをもたらすものとなりますように、祈りをささげてまいりましょう。