2023年9月  5.男児への性加害
 芸能プロダクションのトップが、タレントの卵である複数の男児に対して性加害を行っていたことが明るみに出されました。この事例では、加害者が死亡していることもあり、被害者の証言のほか真実にせまる手立てはありませんが、いったいどのようなことが行われたのか、想像することはできません。女児に対する性虐待や性加害については、被害の報告や裁判の記録などから、実態を把握することはそれほど難しくはありません。しかし、男児への性加害の実態はあまり知られていません。
 男児への性加害の内容は、数少ない被害者からの聞き取りによると、性器の露出、性器への接触、自慰の強制のようなものから、性交、肛門性交、監禁、暴行など犯罪に該当する営みに至るまで、さまざまな行為が行われていることが報告されています。しかし、男性の性被害、特に児童の性被害は、性に対する意識が未成熟なこともあって、「何か変なことをされた」との感覚は鮮明に記憶に残されるものの、その意味がいかなるものであるかを理解できるようになるのは、思春期を迎えた頃だといわれています。このようなことからでしょうか、男児の被害報告の件数は女児のほんの3%に過ぎませんが、実体は報告の数を大幅に凌駕するものと思われます。
 相手が子どもであろうと、性加害は明らかに人権の侵害であり、決して許されることではありません。今話題になっている芸能プロダクションの事例では、被害者の救済、再発防止策の策定はもちろんですが、経済団体などからは、契約の停止などが行われていて、社会的な制裁も加えられるまでになっています。
 キリスト教の教会の中でも、男児への性加害が行われていました。それも、ヨーロッパやアメリカなどで発覚した事例ばかりではなく、この日本でも被害者がカミングアウト(本人の意思で自らの体験を開示すること)して賠償や救済、再発防止を求めています。教皇の意向は、「社会の周辺に追いやられて非人道的な環境の中で生活する人々」の救済です。私たちのすぐ近くで、自らを守る力のない子どもが、性被害にあって人権が侵害され、苦しみを受けることがないようにと、慈しみと愛を注ぎながら、皆で子どもたちを見守ってまいりましょう。