2023年10月  2.傾聴と対話
 ローマで第16回世界代表司教会議(シノドス)が開催されています。日本の司教協議会を代表して参加している菊地功大司教は、全信徒が心を合わせてシノドスのために祈ることを呼びかけています。
 今月の教皇の意向も「シノドス」です。そして、その意向の中で教皇は、シノドスの先に私たち全人類が目指すべきことを、示唆しています。それは「傾聴と対話を大切にする姿勢」です。傾聴とは、相手の言うことを否定せず、耳も心も傾けて、話を熱心に聴く会話の進め方です。そして、対話とは、直接に向かい合って互いに話をすることです。このことを絶え間なく繰り返していく先には、イエスが私たちを導こうとされた平和が、必ず実現されるのでしょう。家庭の中の諍(いさか)いも、民族間のいざこざも、さらには国家間の戦争も、平和へと導かれていくはずです。そのことが何よりも大切であることをしっかりと確認するために、教皇はシノドスを招集しているとも考えられます。
 「傾聴と対話を大切にする姿勢」の意義を、シノドスというカトリック教会の枠の中で再認識しようとしている理由は、霊(スピリット)の領域でもこの姿勢が平和への道に欠くことができない重要な要素だからです。神との交わり、つまり祈りにおいて、傾聴と対話は基本姿勢なのです。心を傾けて神の話されることを熱心に聴くことをおろそかにしていないでしょうか。祈りといえば、願い事や頼み事が神の心に届くようにおこなう営みだと錯覚してはいないでしょうか。私たちは人に向かってばかりか、神に向かっても傾聴と対話の聖性が求められています。
 菊地大司教は、このシノドスの「目指すところは、教会が聖霊の導きを共同体として識別しようとする姿勢を、しっかりと身につけようとすることにある」と述べています。同時に、「分かち合いを中心にして聖霊の導きを識別しようとするプロセスは、つかみ所がなく、明確なゴールが見えません」とも言っておられ、シノドスを「教会の霊的成長のために行われる祈りの集い」であると位置づけています。
 「共同体として識別する」にあたって、神と人とに対して、傾聴し対話することが何よりも大切だと教皇が述べていることをしっかりと受け止め、29日まで続くシノドス総会の第1会期のために、心を合わせて祈りをささげてまいりましょう。