2023年10月  3.あなたがたに平和があるように
 日本の教会は、今行われている「シノドスの歩みに合わせて、社会に福音を宣べ伝える使命を思い起こす」ことを意向として掲げました。それは、父と子と聖霊のみ名のもとに洗礼をいただいたすべての人が、イエス・キリストによってもたらされた、神からの喜びのおとずれである福音を、世界の隅々にまで知らせることに関わるように、招かれているからです。とは言うものの、福音とは何かをしっかりと説明することは難しいことですし、抽象的で漠然としていて、具体的に何をどのように伝えればよいか、見出すことは容易ではありません。
 そこで、復活したイエスが弟子たちの前に現れた時にかけた、あいさつの言葉を思い起こしてみましょう。それは「あなたがたに平和があるように」でした。それは、単に戦いの無い状態だけを示す平和ではなく、恐れを取り去り、不安を拭い去り、寂しさや苦しみに喘ぐ人を慰め救う神の平和です。そして、平和を実現するために必要なことは、出会う人すべてに対して分けへだてなく愛を示すことだと、イエスは教えられたのです。愛とは、人間の尊厳を認め合い、大切にし合うことです。神が私をかけがえのないものとして大切にしてくださっているように、すぐ目の前にいる人に対しても、同じように大切にするようにと、「互いに愛し合いなさい」と命じておられるのです。
 残念ながら今日の世界状況は、平和から遠のいてしまっています。人々は平和を祈り、願っています。ロシアとウクライナの戦争は終息のめどが立ちませんし、イスラエルとパレスチナの間でも戦闘・殺戮が行われています。人のいのちを奪うことほど、愛の行いから遠いものはありません。「あなたに平和がありますように」と言いながら、その人を殺(あや)めることはできないでしょう。
 大きな平和は、小さな平和が積み上げられることでもたらされるものです。カトリック教会のミサでは「主の平和」と平和のあいさつを交わしますが、英語のミサでは「peace be with you(あなたがたに平和があるように)」と唱えます。日本の教会の「福音宣教」の意向に合わせて、この一週間は出会う人すべてに向かって「あなたに平和がありますように」と、心の中で言葉をかけるようにしてはいかがでしょうか。