2023年12月  4.インクルーシブ
 「インクルーシブ」とは、どのような意味なのでしょうか。英語の辞書を引くと、包括的な、幇間的な、全てを含んだ、といった意味であることが分かります。全く反対の意味をあらわす言葉は、「エクスクルーシブ」で、排他的な、排外的な、中に入れない、締め出すといった意味で使われます。
 現代社会では、多様性、ダイバーシティが容認されています。交通通信手段が急速に発展し、人々の移動、移住が頻繁となり、人種や民族、国籍や宗教など、それぞれの人の固有の特性が、隣り合って生活する時代が到来したので、それを容認しなければ社会が成り立たなくなっていることに、誰もが気付くようになったのです。
 厄介な問題があります。誰もが自分が身につけた生活習慣や文化が、最も優れていると錯覚しているので、他の特性をもって生活している人たちを卑下して見たり、排除したりする傾向があるのです。エスノセントリズムといって、自文化中心主義、あるいは、自民族中心主義といった訳語が充てられています。多様性を容認せざるを得ない社会の中でも、この厄介な感情が渦巻いているので、差別や偏見がそこここで見受けられるのでしょう。
 文化に優劣はありません。もちろんのことですが、民族にも人種にも優劣はありません。すべてが優れていると理解すべきでしょう。ですから、多様性社会では、分け隔てなく、すべての価値や文化を排除せずに、包み込むといった発想が求められ、その実現こそが人々を真の平和へと導くかぎとなるのでしょう。
 今月の教皇の意向は、「障がい者」です。人種や民族とは異なった局面ですが、障害者の間には固有の文化、価値が醸成されています。真のインクルーシブが実現されるならば、障がいを持つ人も、排除されることはなくなり、差別や偏見もなくなるでしょう。
 日本語にすると、抽象的な語感となってしまう、今日の社会で最も大切にされるべき態度、「インクルーシブ」を生活の中心に置いて、その一週間を過ごしてみましょう。きっと、自分がますます豊かにされていくことと思います。