2023年12月  5.COP28とラウダ―テ・デウム
 12月13日、アラブ首長国連邦のドバイで開催されていた国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)は、成果文書を採択しました。約200か国の代表は、最悪の気候変動を回避するために、化石燃料からの脱却を進めることで合意しました。石油産出国のひとつが議長を務めたこの会議で化石燃料からの脱却を採択できたことは、国際社会にとって大きな前進ですが、アラブ首長国連邦の産業・技術大臣が「画期的な合意であると評価する一方で、真の成功はその履行にある」と強調したことが伝えられました。
 教皇フランシスコは、この会議への参加を望んでいましたが、体調への懸念から出席することができませんでした。教皇のメッセージは国務長官バロリン枢機卿によって代読されましたが、「分裂を過去のものとして、力を合わせよう。神の力をもって、共通の未来を輝くあけぼのに変えるために、戦争と環境破壊の闇から抜け出そう」と祈りを込めてアピールを締めくくりました。
 教皇はこの会議の重要性に鑑みて、10月4日、アシジの聖フランシスコの祝日に使徒的勧告「ラウダーテ・デウム――気候危機について」を発表しました。ラウダーテ・デウムとは、「神をたたえよ」という意味です。技術主義(テクノラティック)パラダイムからの転換が必要で、ラウダーテ・デウムの31項では「最小限のコストで最大の利益をという考え方は、合理性、進歩、当てにならない約束によって偽装されていて、ともに暮らす家である地球へのまことの思いやりを、また、私たちの社会が見捨ててきた貧しい人々や困窮者たちへの支援を心に置いた生き方を不可能にします」と生産性向上を第一とする現代社会のパラダイムを痛烈に批判しています。そして、同69項では、「もっとも有効な解決策は、個人の努力からだけでなく、何よりも国内政治と国際政治の重要な決断からもたらされる」と、COP28へ期待を寄せられていました。
 2023年を締めくくるにあたって、教皇フランシスコの今いちばんの願い、望みが込められた「ラウダーテ・デウム」の趣旨を汲み取り、脱炭素化社会の実現に向けて歩みを進めていくことができるように、祈りをささげましょう。