2024年2月  3.緩和ケア
 今月の教皇の意向は、終末期医療において、必要な医療と人間的なケアを受けることができるように祈ることです。
 がんは、日本人の死因として最も多い病気で、およそ3人に1人ががんで亡くなっています。がん患者は、がん自体の症状のほかに、痛み、倦怠感、死への恐怖など、さまざまな苦痛や苦悩が伴います。特に痛みは約7割の人に見られる症状で、痛みの強さも、尋常ではないほどに達することもあります。特に、呼吸器系のがんの場合、肺は空気を吸ったり吐きだしたりと、常に動いているので、がん細胞が神経に触れているときなどは、ずっと継続して痛みに耐えなければなりません。ですから、がん治療の初めから、患者とその家族が人間としてふさわしい生活を送れるように、病気そのものの治療を目的としない、緩和医療、緩和ケアという考えが大切になります。世界保健機関では、緩和ケアを次のように定義しています。

・痛みや、そのほかの苦痛となる症状を緩和する。
・生命を重んじ、自然な流れの中での死を尊重する。
・死を早めることも、いたずらに遅らせることもしない。
・死が訪れるまで、患者さんが自分らしく生きていけるように支える。
・患者さんの治療時から、患者さんと死別した後も、ご家族を支える。
・患者さんやご家族に、心のカウンセリングを含めたさまざまなケアをチームで行う。
・生活の質(クオリティ オブ ライフ:QOL)を向上させ、前向きに生きるちからを支える。
・がん治療の初期段階から、外科手術、化学療法、放射線療法などと連携しながら、緩和ケアを行う。

 終末期医療を受けながら、いのちを閉じるにあたって、どのような人生をたどったかを丁寧に振り返るときに、痛みや恐れから解放されて人間らしい状態を保つことは大切です。緩和ケアの意義を理解し、このケアに関わる医療従事者が、心を込めて人間の尊厳を大切にして患者や家族に接し得ることができるように、祈りをささげてまいりましょう。