2024年6月  3.飢餓と異常気象
 難民が生じる原因の一つが、異常気象による農作物の不作です。栄養不足の人口が35%を超える国は、11カ国にものぼっています。その一つの北朝鮮では、乾燥や猛暑、洪水の影響で、農業生産の収穫量はこれまでの最低の500トンまで落ち込んでいます。アフリカのマダガスカルでは、干ばつによって収穫量が大きく減少し、害獣と変則的な降雨も加わって、南マダガスカルの約90万人が急速に食糧不足に陥りました。ソマリアでは、3年連続で雨季に雨が降らないことから、極度に悪化した干ばつで、この数十年間に最も乾燥した状況の中で、600万人ほどが深刻な食糧不足に直面しています。
 難民が生じる最も大きな原因は、戦争・紛争であることは間違いありません。今すぐに和平の実現がなされるようにと祈ることは、私たちの最優先事項ですが、平和な世界を脅かして、将来への不安を生じさせる大きな要因は、地球の未来です。地球の温暖化による異常気象は、食糧危機と並んで、私たちを不安にさせています。その不安は、自らの存在を永らえようとする利己主義的な思考を産み、紛争や戦争に向かう潜在的な力になっていきます。
 第一次世界大戦も第二次世界大戦も、将来に対する不安が大きな要因でした。ですから、平和な世界を築くには、異常気象という課題に取り組まなくてはなりません。教皇は昨年のCOP28に向けて、「ラウダーテ・デウム」という気候危機についての使徒的勧告を発表し、技術主義パラダイムからの脱却を提唱しました。そして生活様式の簡素化も訴えています。
 教皇の意向は、難民が新しい場所で受け入れられ、人権が護られるようにと祈ることを奨めています。加えて、難民が生じる根本原因の一つである異常気象についても関心を抱き、私たち一人ひとりが地球にやさしい生活様式を整えるように努めてまいりましょう。