2024年8月  3.世界の失業率
 教皇の意向は「政治におけるリーダー」が、「職を失った人々に配慮し、貧しい人々を優先することができますように」と祈るよう、私たちを導いています。社会保障制度が整備されている国々では、職を失ってもしばらくは失業保険が給付されて直ちに生活が困窮することはありませんが、そのような制度が整っていない国々、また、法的に雇用契約を結ぶ慣例がない国々では、職を失うと直ちに困窮した生活を強いられることになります。親類や近隣の人々の支えの中で必死になって仕事を探しても、労働市場によっては、探せど探せど、職にありつけない状況にもなります。
 失業率を国別に見てみると、2023年末の国際労働機関(ILO)発表の統計によれば、188カ国中で最も高いのは南アフリカで28.84%です。次いで、東アフリカのジブチが26.67%、パレスチナが24.42%となります。失業率の高い国上位10か国のうち、8か国はアフリカの国々で、11位以下もアフリカの国々が上位に並びます。一方、失業率が最も低い国は、カタールで0.13%です。日本は2.60%で167位でした。
 失業率は、労働力人口(15歳以上の働く意欲のある人)のうち職がなく求職活動をしている人、つまり完全失業者が占める割合を示すものです。ですから、失業率が25%ということは、4人に1人が職につけていない状況です。
 国々の間にこれほどの失業率の差が生じる原因は、政治状況や気候変動など様々ですが、その基調には経済格差の拡大があります。資本主義という経済システムは、豊かなものはますます豊かになり、貧しい者はますます貧しくなるという要素を内在しています。何も施策を講じなければ格差は広がっていくため、税の体系に累進課税の要素を取り入れたり、健康保険や年金、あるいは失業保険や生活保護などの社会保障制度によって、困窮者を保護したりする仕組みを、それぞれの国で構築しています。
 現実に目を向けると、戦争や紛争が進行しています。国際的な枠組みで、この経済格差の是正のための施策が講じられることが求められていますが、平和が訪れるまで実現は難しい状況にあります。しかし、教皇の意向にあるように、各国の政治におけるリーダーが、格差是正に目を向けて施策を講じることになれば、状況は好転に向かうはずです。働きたくても仕事が見つからない人の心を想像して、格差が無くなりますようにと祈りを捧げましょう。