2024年11月 1.逆縁 |
親よりも先に子が亡くなることを、逆縁と呼ぶことがあります。そのようなときは、親が喪主を務めない、火葬場へ同行しない、といった風習も古くからあります。また、夫より妻が先に亡くなった場合を逆縁とすることもあります。このような風習は、子を失った親や妻を失った夫の、悲しみややりきれない思いや、目の前で火葬されてしまうことによる精神的な苦痛への配慮からきているものと考えられています。昨今では、火葬に立ち会うことで現実を受け止め、気持ちに整理をつけるという考え方も増えており、逆縁であっても火葬場に同行する場合も多く見受けられるようです。 そもそも逆縁とは仏教の用語で、仏の教えを素直に信じないで、縁に背くこと、またはそのような救い難い人を指しますが、仏教ではそのような人も供養しますので、生前の仇敵が供養をなすことから、親類縁者でもない者が供養する、また年長者が年少者の供養をすることを逆縁というようになりました。そしてこれが俗に転用されて、親より子が先に亡くなることを逆縁というようになったのです。また、寡婦が夫の兄弟と再婚すること、広くは寡夫が妻の姉妹と再婚することも含めて逆縁婚ということにもなりました。 死者の月にあたり、今月の教皇の意向では、「子を失った親」の心に寄り添うように私たちを導いています。長寿社会となったことにより逆縁となる場合は増えていますが、戦争や紛争といった愚かな人間の営みの中でも、逆縁が毎日のように繰り返されています。 カトリックの通夜における司式者の「招きのことば」は「親しい人との別れは、だれにとっても悲しいことです」で始まります。愛する人の死は、人間が通常受けているストレスの120倍にもあたるという研究結果がアメリカで発表されています。心ふるえる出来事として逆縁を受け止め、平和の実現を願い求めてまいりましょう。 |