2025年5月  5.現代の奴隷
 国際労働機関(ILO)は、現代の奴隷を「意思に反して労働や結婚を強制されること」と定義しています。そもそも奴隷とは、人間としての権利・自由を認められず、特定の人の私有財産として労働を強制され、また、売買・譲渡の対象ともされた人を指します。古代から近代まで続いた制度ですが、フランスでは1793年に、イギリスでは1833年に、そしてアメリカ合衆国では1865年に奴隷制度が廃止されました。
 ところが、今日でも人身取引は行われており、身柄を管理監督されながら労働を強制されている状況も見受けられているのです。国際労働機関、国際人権団体「ウォークフリー」と国際移住機関(IOM)が発表した「現代奴隷制の世界推計」によると、2021年の統計では2800万人が強制労働に従事させられていて、人種や文化、宗教にかかわらず、ほぼすべての国で生じていることが報告されています。そして、いずれも脅迫や暴力、支配、欺もう、権力の濫用により、被害者が拒否したり逃げたりできないような搾取の状態にあるのです。
 教皇の意向にある「労働条件」が満たされた就労環境からは、まったく状況が異なっている現代の奴隷の実態を、しっかりと認識しておきましょう。昨今ではミャンマーの特殊詐欺犯罪拠点で、日本人も拉致されて身柄を拘束され、強制的に詐欺の「かけ子」をさせられたことが報道されていました。
 現代の奴隷として非人間的な扱いを受けている人々へ思いをいたし、公正と正義によって人権が回復されることを祈り願う一週間といたしましょう。