2025年7月 2.日本国憲法第三章 |
![]() 第三章は、第十条から第四十条までの31条で構成され、最も条項が多い章です。それほどに、憲法において国民の権利義務をはっきりと規定することが求められていたのでしょう。第十条では、国民の要件について、これは法律で定めると述べ、1950年7月施行の国籍法でその詳細を規定しています。国民の規定、日本国籍を取得する規定等は厳格に定められていますが、日本国憲法は日本国民だけではなく日本に居住するすべての人の人権を保障しています。 第十一条は「基本的人権」についてで、「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない」と規定しています。さらにこれは「永久の権利として、現在及び将来」にわたって与えられるとしています。このように制度としては、人間の尊厳が守られています。 第十二条と第十三条は、公共の福祉についての言及です。第十四条は法の下の平等について、「人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」と明言しています。ここまでが、権利と義務についての総論で、第十五条の公務員についての言及以降は各論が続きます。 憲法で保障された権利が実際に保障されているかどうかは最終的には司法の判断になります。犯罪によって権利が侵されていたり、行政のしくみの不備で権利が行使できなかったりすることがありますが、それは裁判で争われることになります。ところが、この司法の手続きがことのほか時間を要するので、最高裁判所まで争いが続くと、最終判断に至るまで10年を越える月日を費やすことにもなりかねません。その間、人間の尊厳を侵害されたと訴えを起こした人の人権は、宙に浮いたままになってしまうといった課題もあります。 日本では憲法によって基本的人権が保障されていますが、今日の世界でも軍事政権下や独裁政権下では、人間の尊厳が保たれていない状況が見られます。私たちの社会のしくみに感謝するとともに、いのちあるすべての人のこの権利が保障されるようにと、祈りをささげる一週間といたしましょう。 |