2025年7月  4.表現の自由
 人間の尊厳を保証する基本的人権の一つに、表現の自由があります。日本国憲法では第21条で「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない」と規定して、すべての国民と日本で暮らすすべての人にこの権利を保障しています。また、世界人権宣言では、第19条で「すべての人は、意見及び表現の自由に対する権利を有する。この権利は、干渉を受けることなく自己の意見を持つ自由並びにあらゆる手段により、また、国境を越えると否とにかかわりなく、情報及び思想を求め、受け、及び伝える自由を含む」と定められています。このように、誰もが自分の意見を持つ自由、そしてそれをあらゆる方法で国内外に伝え、また他者の意見や情報を求める自由が保障されています。
 ところが、世界に目を向けると、この権利が与えられていなかったり、あるいは制限されたりしている国々が今日でも存在しています。北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)では、報道は完全に政府の管理下にあります。したがって、国民は表現する権利ばかりか、知る権利までも侵害されています。政府に批判的な情報を得ることは全くできません。アラビア半島東岸の小国エリトリアも、表現の自由が制限されている国のひとつです。政府による情報統制が厳しく、ジャーナリストは政府の検閲を受けたり、逮捕されたりすることがあります。国境なき記者団が発表した2025年版世界報道自由度ランキングの下位10か国は、エリトリア、北朝鮮、中国、シリア、イラン、アフガニスタン、トルクメニスタン、ベトナム、ニカラグア、ロシアです。
https://rsf.org/en/index
 表現したいことをすべて自由に公の場に提示することがゆるされているわけではありません。他人の権利を侵害する行為、公共の福祉に反する行為は、制限してしかるべきです。自分と異なる属性を有する者を排斥するような言動は、全ての人々が個人として尊重される社会にはふさわしくありません。しかし、どこまでが許されるかを判断するのはきわめて難しく、日本では最高裁判所で争われた事例もあります。
 日本の教会の意向は「人間の尊厳」です。基本的人権の中でも民主主義の根幹にかかわる表現の自由はとても大切であることを踏まえ、私たちがその保障の恩恵にあずかっていることに感謝し、またそれが与えられいない環境で暮らす人々に思いをいたして、この一週間を過ごしてまいりましょう。