2025年8月  2.紛争の原因
 私たちにとってうれしいニュースがあります。前教皇フランシスコが帰天されてからは、過去のさまざまな映像を編集してリリースしていた教皇のビデオに、新教皇レオ14世が初めて登場して、今月の意向である「共存」をテーマに私たちを祈りへと招いています。是非ご覧ください。
 ところで「共存」という語は、双方が同時に存在する(mutual coexistence)ということばに由来しています。共に生きるために、多様な人々が互いを受け入れ合って、対立や紛争ではなく、共存し平和な社会を築いていくのは、容易なことではありません。世界中のすべての人が平和を願っているのに、なぜ共存することができず、あちらこちらで紛争が起きてしまうのでしょうか。紛争の根本的な原因はどこにあるのでしょうか。
 冷戦後の時代では、文化や宗教、価値観の違いが国際的な緊張と対立を引き起こし、武力紛争が起きると考えていました。しかし、その後の研究では、こうした対立は紛争の「手段」として使われているだけであり、根本的な「原因」ではないと考えるようになりました。民族、宗教、思想の違いによって対立する勢力が分かれるのは、争いに勝つためには仲間の強い結束が求められ、民族などの仲間意識や信仰心を用いることで人々を強固な絆で結びつけやすいためであると示唆されています。
 紛争の原因についてはさまざまな研究がなされており、一つの要因を根本的な原因と断定することは不可能です。有力な説の一つは、経済的な欲求を掲げています。対立する集団はこの正当性を主張するために、民族や宗教などのアイデンティティを利用したり、政治やイデオロギーで理論武装したりするのだとされています。
 経済的な欲求を生む背景には、不平等があります。搾取があります。そして貧しさがあります。つまり正義(公平・公正を含めた広い意味での正義)が貫かれていないことが紛争の原因の根底にあるということにたどり着きます。
 何よりも、富の分配が公平に行われて、貧しさを克服することができるようにと、祈り願ってまいりましょう。