2025年10月  1.人類の友愛
 教皇の意向は、「さまざまな宗教的伝統間の協力」です。そして、その目的を「平和、正義、人類の友愛を擁護し促進するため」としています。
 今日の世界は混迷の一途をたどっています。国連総会が開催されていますが、戦争や紛争の当事国は、それぞれに自らの正統性を主張するだけで、議論はまったくかみ合いません。世論は、人類が一つであるという共存に向けた歩みよりも、自分たちさえ豊かで偉大であれば、他はどうでもよいといった、極端な保護主義に傾いているように思えます。
 日本でも最近の出来事として、ムスリムの子どもたちにハラールの給食を提供することについての正確さを欠く情報がSNSで拡散されたり、アフリカ諸国を招いて横浜で開催されたTICADの後に構想が発表されたJICA(国際協力機構)主幹の「アフリカ・ホームタウン事業」についてナイジェリア政府発表の誤った情報が拡散されたりした後に、外国籍の人たちを極端に排斥する趣旨のSNSへの投稿が一挙に拡がりました。結果として、JICAは、このホームタウン事業の撤回を発表することになってしまいました。
 教皇は、キリスト教ではない宗教を信じている人と共に、平和と正義を推し進めように私たちを招いています。世界のおおまかな宗教分布をみると、キリスト教23億人、イスラム教20億人、ヒンドゥー教12億人、仏教3億人、その他の宗教と民間信仰が2億人となります。そのそれぞれは排他主義も保護主義を掲げていません。そしてすべての宗教で、平和に向けて歩みを進めることができるようにと祈り願っています。
 同じ理念に向けて歩む諸宗教が垣根を越えて協力することは、困難を伴いますが不可能なことではないはずです。教皇の意向に心を重ねて、「人類の友愛を擁護し促進する」ことができますようにと祈りをささげる一週間といたしましょう。