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3. 「わたしの東日本大震災」

 3月11日の地震発生から、わたしが「だれかのためにできること」として実践したことは、被災地に生きる人々のことを思い祈ることでした。そして地震発生から2ヶ月が過ぎた頃、1週間という短い期間ではありますが南三陸町でボランティア活動をさせていただきました。
 現地に行って何をしてきたかと問われると、「何もできなかった」と言わざるをえない程に自分の無力さを感じました。地震と津波によって全壊した町を見て言葉をなくし、苦しみや悲しみの中にある人々に、側にいて慰めることも励ますこともできず、「なんと言葉をかけたらいいのか」「どう接したらいいのか」と心に不安や恐れを感じ、一人一人とのコミュニケーションの難しさを味わいました。また、自己満足になってしまいそうな「~してあげたい」という思いと時間だけが過ぎていくことへの空しさ・焦りなど、心に沸いてくる様々な自分の感情と向き合いながら、少しでも誰かのためになればという思いで、与えられたことに一生懸命取り組みました。
 今回のボランティア活動は主に、「心香(CoCo)」というケアカフェでのお手伝いをさせていただきました。心香は「訪れる人の、魂の救いと心の癒しとなる場所になってもらいたい」という想いから始められたカフェだそうです。どなたでも入ることができ、コーヒーなどを無料でお配りし、一人一人に心休まる一時を過ごしてもらうことを目的としています。心香を訪れる人々と接しながら、「わたしが今、この時を南三陸町で生きる意味とは何だろうか」「無力な自分にできることはなんだろうか」と何度も自分に問いかけました。すべてを失った人々が生きる意味・自分の存在の意味を探し求め、苦しみ・悲しみの中で助けを求めている。被害に会われた方々が立ち上がり、協力し助け合い、互いに励ましあいながら生きている。ボランティアで訪れる人々が「誰かのために何かしたい」という思いで全国から駆けつけ、自分のできることに一生懸命取り組んでいる。そんな、南三陸町に生きる人々の様々な思いを心に受け止め、共に過ごす時間の中に少しずつ心の壁がなくなっていくことを感じました。それはわたし自身が無力であることを認め、神様により頼むことで心が自由になったからでもあるのだと思います。カフェに漂うコーヒーの香りと訪れた人が喜びと安らぎの内に過ごす一時を、共に味わうことができたことに何よりも喜びを感じ、大きなお恵みとなりました。
 ボランティア活動最終日、南三陸町を去る車の中から、「今日で南三陸町とお別れなのか」という複雑な心境の中、下校する子どもたちの様子が目に留まりました。「この子たちは絶望の中から何を見出し、これからの人生を歩んでいくのだろうか」「地震と津波を体験し、今何を感じ、何を思い、何を心に背負っているのだろうか」・・・わたしの心に苦しみと悲しみの気持ちが込み上げてきました。「神様、どうか一人一人の苦しみ、悲しみが、いつの日か喜びの涙になりますように」と祈りを捧げ、すべてを神様に委ね、南三陸町を後にしました。
 今回の貴重な体験が、これから先も被災地に生きる人々のことを思い祈ることで、自分自身の心の救いとなり、また他の人と分かち合うことによって、苦しみや悲しみの中にある人々のために心を一つに祈ることができ、一人一人の慰めと励まし、そして生きる糧となってもらえたらと感じる体験となりました。
 (東京都 男性 こうちゃん)

(特集-だれかのためにできること3 2011/7/15)

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