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1. いのちを慈しむ

  生まれ出た赤ちゃん――その誕生の知らせに皆が喜び、「おめでとう」「よかったね」と声をかけ、人々の笑顔がいのちの誕生を祝福します。
 「いのち」は、ありがたいです。それは、生命に秘められた可能性に、はかりしれないものがあるからでしょう。ひとつひとつの「いのち」を祝い、その可能性が十分開かれるよう願いたいものです。
 他方、その大切な「いのち」が傷つけられるのを見たり聞いたりするのは、こころ痛みます。とどまるところを知らない妊娠中絶の悲劇…、子供への虐待…、障害者への差別と排除…、戦争や貧困によって失われる乳幼児のいのち…、社会的ストレスからくる過労死や自死…等々。
 また、人間の臓器の商品化…、それは、個人の金銭欲と、難病や困難にある人の切なる願いを、市場原理に取り込み商業化し、利益を得ているからなのでしょうか。
 人生の歩みの中での孤独と厳しさ、生活の中での不安定さが、さまざまな悲しい事や痛ましい出来事を生み出しているのかもしれません。しかし、私たちが生きていくためには、自分と人々の「いのち」を育む態度が、不可欠です。人の「いのち」は、かけがえのないものであり、ひとりの人間の「いのち」は、神秘に触れるからです。「いのち」が他の物事と簡単に並べて考えられない貴重な宝であることを、私たちは度々意識させられます。
 私たちは「いのち」を与えられ、多くのものに支えられて生きています。生きることを、当たり前のように考えがちですが、私たちに「いのち」を与えてくださった方は、「いのち」を育むために、一人ひとりの協力を待ち望んでおられます。いろいろな困難に直面する中で、私たちは何を優先して選び取っていけばよいか、「いのち」の真価を見出していくことが大切なのでしょう。
 私たちがいただいた「いのち」の日々は、貴重な体験を重ねてゆき、心と魂を新たにされ、感動を生み出す可能性を秘めています。体も心も生かす「いのち」の営みの、目に見える姿とその奥に秘められた希望のメッセージを、この時期に互いに見つめ合い、思いめぐらしてみたいと思います。



(特集-いのち 1 2002/11/29)

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