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1. どちらを選択するか

 他者の存在を恵みと捉えるか、脅威と捉えるか。わたしたちの日々の家庭生活から国際情勢に至るまで、今過ごしているこの一分一秒から悠久の歴史に至るまで、わたしたちは生の地平のあらゆる局面で、この二つの態度のどちらを選択するかを問われています。それはまた、世界を豊かな多様性のうちにお造りになった神の創造のみわざを受け入れるか、拒否するか、という選択肢です。ちょっとした日常の習慣や考え方から、性別、人種、宗教、国家の多様性に至るまで、自らと異なる他者を排除し攻撃し支配しようとする生き方は、束の間の安堵の後、結局虚無の苦しみしか生み出さず、自らと異なる他者を恵みとして受け入れ、喜び、共存し、与え合う生き方は、一時の痛みの後、至福につながっていることをわたしたちは心底学んでいくことを求められています。
 パレスチナを巡る情勢が今、変化の兆しを見せています。パレスチナ自治政府のアッバス議長、イスラエルのシャロン首相がエジプトで初の首脳会談を行い、停戦を宣言しました。2000年の秋以降、続いてきた大規模な暴力の連鎖に終止符を打つ意思を二人が明らかにしたのです。長い間、パレスチナとイスラエルは互いに相容れない他者として争いを続けてきました。パレスチナの人々にとってイスラエルは長年住み慣れてきた自分たちの土地に突然侵入してきた敵であり、イスラエルの人々にとってパレスチナは悲願であったイスラエル国家を樹立するために排除しなければならない邪魔者だったのです。しかしこの争いが結局流血の悲惨しか生み出さないことを歴史ははっきり証明しています。双方が、受けた仕打ちに対して報復を繰り返すことは、解決の手段となりえず、イスラエル側が圧倒的軍事力と経済力で抵抗勢力を封じ込めたとしても、それが正しいとは言えないのです。
 今こそ、パレスチナの人々もイスラエルの人々も、まず互いの存在を認め、相手を理解しようとすること、そして、自分たちの安全は相手の存在を認めることにかかっていると認識することが不可欠です。そこに立ってはじめて、互いの未来、世界の未来を希望することができるのです。

(特集-平和への一歩 1 2005/2/18)

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