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6. アフリカのエイズと子供たち

 80年代(1981年6月)にアメリカで初めてのエイズの症例が発表された時、衝撃的なニュースとして世界に報道され、大きな心配をもたらしました。その時から20年以上経っている今、それほど話題にされなくなりましたが、依然として大きな世界的問題です。
 現在、世界でエイズウイルスに感染している患者は約4,000万人ですが、地域別の感染者数は、サハラ以南のアフリカが2,500万人を超えています。続いて多いのが、南・東南アジアで500万人以上です。日本は1990年代の2倍の年間600人以上に達しています。
 アメリカ、ヨーロッパや日本では、エイズの薬ができているので、恐ろしい病気ではあるけれども、単なる治らない伝染病として思われるようになりました。
 アフリカの状況を考えると、話が違います。この20年の間、エイズに感染して亡くなった2,200万人の中の80%はアフリカ人です。亡くなった人の大部分は20~40歳の大人たちです。結婚している若い世代なので、子供を残して死んでいきます。
 今、世界には、親がエイズによって亡くなったために孤児となった、15歳未満の多くの子供たちが、惨めな生活を送っています。たとえば、エチオピアやウガンダでは、エイズによる孤児数は百万人にも上っています。ケニアの場合、百万人を超えているそうです。
 エイズによる孤児たちは、感染していなくても差別され、疎外され、いろいろな理由で悩まされています。多くの場合、彼らは施設に入れられ、あるいはホームレスの仲間になってしまいます。また、亡くなった親の遺産相続人であるにもかかわらず、遺産を継ぐことができないことも度々あります。
 エイズによる孤児の中で、出生前に母の胎内にいる間に感染したと言われる子供もいます。しかし、ただエイズ検査が陽性反応だったということで、そのように思われるだけです。出生前の検査で陽性でも、適切な治療を受ければ、治るケースが度々あるのです。ところが現状は、生まれて間もなく親に捨てられたり、殺されることさえあります。良い薬と適切な治療が施されれば、病気と無理解のために死んでいく多くの子供が救われるのです。
 エイズは、現在直面する問題の中で最も困難なものの1つです。しかし、この場合もそれに対する先進国と発展途上国との間の差が大きいのが現状です。一番大切にしたいのは、罪のない、責任もないこの子どもたちを受け入れ、助けていくことを願い、実際にその手段をとる思いやりの心を、世界に育てることではないでしょうか。

(特集-コンパッション 6 2004/1/2))

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