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8. 仲間の大切さ

 前回の塩釜とは全くと言って過言ではない程に違っていた。交通手段、街や近隣地区の風景、復旧作業の状況、ベースのシステム、ボランティア活動の作業内容。初日は戸惑いながらも、違いは当たり前と自分に言い聞かせて気にしないようにした。次の日にはもうすでに馴染んでいた。

 ベースには日本各地から多種多様の文化が集まっている。ここでの出逢いこそ何よりも興味津々で楽しい。教会のすぐ目の前にはもう津波での被害風景が広がっている。一日の一瞬でも気分をリフレッシュするために仲間たちとの会話がどれだけ心を休めたか。

 私は阪神大震災を経験し、その後も度々地震を経験し、塩釜でも大きな揺れを感じたが、どうやらトラウマはないようだ。しかし、今回の地震と津波による被害でのトラウマを抱える人は多いかもしれない。 ある日、おばあさんが教会から物資を持ち帰る様子を見て、荷物がいっぱいだったため、家まで一緒に持つことにした。すると、その方と一緒に来ていた近所の方が、私を家に招きいれ、家族の写真を見せて話をしてくださった。ベースに毎日顔を出していたその方は、言った。

「津波前は'お茶会'は、皆どうしても不平や不満が口から出てしまうでしょ、それが嫌で絶対に参加しなかったの。でも、地震以後精神的に不安定で、夜も眠れなくて・・・。おかしくなっちゃって。そんな時に、近所の人が'教会にこんな所ができてるよ'って誘ってくれて、嫌だったけど来て話をしている内に、心が大分楽になったのよ。だから今では毎日来ているの。」

 その方は、娘さんやお孫さんのために今までずっと一生懸命働いてきて、ようやく落ち着いてきたと連絡を受けた矢先、地震が起きて頭がパニックになったそうだ。  東北では高齢者が多く、頼りにしていた家族の死、住宅ローン返済に困る人、仕事を無くした人等々、これからもう一度やり直そう!という気には中々なれない年齢の人が多いと思う。その上で心に傷を負い、毎日余震と津波の恐怖に覆われている。

 震災から2ヶ月。これから「心のケア」が今まで以上に必要になるのではないか。仮設住宅ができてきても、選り好みをしたり、家が無事に残った人たちを批判したり対立をしたり、そういう事が被災地では始まっている。しかし、その人たちだけが悪いとは言い切れない。彼らも被災者で不安や傷がたくさん内にこもっている。それを内に閉じ込めていたら自殺に走ったり、もっと卑劣な行動に出るかもしれない。全ては初めての事。誰にもこれからどうしていけば良いのか分からない。しかし、人と人、困ったときには話を聞いて、理解して、一緒に考えて、答えを模索していく。それしか方法はないと思う。ボランティアも被災者も皆で「話し合い、赦しあい、抱きしめ合う場」を作っていくしかないと思う。

 震災が起こり、日本中が一気に立ち上がった。しかし、私はそこにも違和感を感じる。震災が起こる前も世界中のあちこちで貧困や戦争・紛争で今の被災地のように荒廃した村や街、傷ついたり食べ物に困ったりした人たちはいる。それは震災後も変わらない。同じ日本だから、ではなく「誰かを必要としている人がいるから」で、これからは被災地だけではなく他の大陸(他国)にいる人たちにももっと関わっていって欲しい。そうすれば、世界はもっと平等に、みんなが愛し合って争いが減っていくはずだと私は信じている。

最後に、この活動を通して現地で、また報告会等で一緒になった一人ひとりに出逢えた事を心から嬉しく思う。そして、喋りすぎた私を呆れずに接したりお世話をしてくれてありがとう。

大阪在住 女性 

(特集-だれかのためにできること8 2011/8/20)

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