アーカイブ

4. 四人目の博士

 イエスの誕生を知らせる星を見て、三人の博士たちが東方からベトレヘムを訪れ、幼な子に贈り物をしたことは、よく知られています。
 言い伝えによりますと、実は、もう一人の博士がこれまた星を見て、自分の医師としての職業も妻子も捨て、全財産を売り払って、高価な真珠を求め、それを捧げ物とすべく、ベトレヘムさして旅立っていたのだそうです。
 ところが、この四人目の博士、アルタバルは、道中で病人を見かけては手当てをしてやったりしているうちに、他の三人に遅れてしまい、ベトレヘムに着いた時には、イエスはすでにそこを去っていました。
 その日から、アルタバルの新たな旅が始まります。それはイエスを求める旅でしたが、その行く手にはいつも、彼を必要とする病人、または、生活の糧が得られずに悪事を働いている人々がいて、アルタバルは、その人たちに惜しみなく手を差しのべ、彼らと共に生活したのでした。またたく間に、三十数年が経ちました。
 「イエスが十字架につけられる」この知らせに、すでに年老いたアルタバルは、これを最後の機会と立ち上がり、肌身離さず持っていた真珠を手にカルワリオの丘を目指します。それなのに、何ということでしょう。その途中、またもや彼は一人の哀れな女と出会い彼女を助けるために、その真珠を手放してしまうのです。その間にイエスは十字架上で息を引きとります。
 嘆き悲しむアルタバルに、イエスが現れ、優しく言うのでした。
「お前は私に逢えなかったというが、何度も何度も逢っていたのだよ。私の小さい兄弟姉妹の一人にしてくれたことは、他ならない私にしてくれたのだから。」
 かくてクリスマスは、アルタバルのように、幼な子に捧げる「心の真珠」を各自が持って、イエスの姿を人々の中に見出す、私たちの旅の始まりなのです。


「クリスマスの旅」(心のともしび リーフレット)より

(特集-クリスマス 4 2002/1/4)

ページ上部へ戻る