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4. 平和への願いを描く

 沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落した事故は、まだ記憶に新しい。米軍や日本政府に強い抗議の声が寄せられたが、納得のいく解答は得られず、基地と隣り合わせの生活を強いられている住民は、恐れと不安を抱えたままの日常生活を余儀なくされている。
 米国と日本の外交政策が、この問題の根本解決からは程遠い枠組みで推移している中、市民レベルでは、沖縄のある小学校で次のような教育活動が行われた。

 11月23日、琉球大学附属小学校3年1組の児童ら39人が、沖縄国際大学ヘリ墜落事故を題材に、命や平和、愛をテーマにした絵をブルーシートに描いた。同校は事故のあった宜野湾市に住む児童も多く、夏休み明けの教室は基地問題に話題が集中。仲嶺盛之教諭の発案で、絵を描くことで平和への思いや願いを膨らませようと企画した。
 同校が毎年開いている研究発表会の公開授業の一つとして行われ、父母や県内の小中学校の教諭らが見守った。
 仲嶺教諭によると、事故現場近くに住み、爆発音を聞いた児童や9月12日の市民大会に親子で参加した児童もおり、「子どもたちの声に押されるように、ヘリ事故を研究発表会で取り上げることを思い立った」という。
 10月25日には、沖縄国際大学を訪れた。学生自治会の淵之上雄一会長ほかの案内で、焼け跡の残る本館を見学し、現場を封鎖した米兵らの様子を聞き書きするなど、事前学習を重ねた。
 公開授業では、校舎の中庭に約7.2メートル四方のブルーシートを広げ、赤や青、黄など好きな色を使って、「平和」を連想しながら、空や海、木、地球、人間などを描き込んだ。
 當真ふじのさんは、「平和な空は青色のイメージ」と、空と魚の泳ぐ海を青色で描いた。事故現場を見た体験を振り返り、「何で沖縄ではこんな怖いことが起きるのか。いつ自分の家に落ちるかもしれない」と話した。
 丸い地球の上に手をつないで輪をつくる人間たちを描いた譜久山倫子さんは、「世界中の人が、仲良く毎日を過ごせるように、という願いをこめた」と言う。
 児童たちと再会した淵之上会長は、「皆さんが力を合わせて大きな絵を描いたように、平和もみんなが協力しないと実現できない。私たちみんなが一生懸命勉強して、平和がつくれるようがんばりましょう」と呼び掛けていた。
 こうして平和への願いがこめられた絵は、その週末に開かれた沖縄国際大学祭で展示された。
(“ブルーシートに描く 命、平和、愛”「沖縄タイムス」2004年11月24日参照)

 私たちは平和のために、行動することができる。どんなに小さくても、力を合わせて平和への願いを表現し、命と愛のメッセージを伝えることができる。そのメッセージは、決して小さいものではなく、国を動かし、世界を動かす原動力となるのではないだろうか。
 クリスマスの夜、神はこの地上の小さな場所を選び、無力な幼子として生まれた。私たちのために、命と平和と愛をたずさえて。

(特集-希望の光 4 2004/12/17)

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