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17. 感謝のこころ

 私は9月の終わりに、学校の試験休みを利用して5日間、宮城県塩釜市へ震災復興のボランティア活動をしに行ってきました。ここでは、その中での1人のおばあちゃんとの出会いについて、書かせていただきたいと思います。

 塩釜での活動初日、この日はベースの近くにある酒屋さんで、ご自宅や酒ビンの清掃をすることになっていました。その酒屋さんへの移動中、ある1人のおばあちゃんに声をかけられ、私と私の母、もう1人のボランティアの方と3人でおばあちゃんのご自宅へうかがいました。おばあちゃんは、外にあった物干しざおが2日前の台風で壊れてしまい困っている、とのことでした。

 実はちょうどこの日の2日前台風が通過し、塩釜も甚大な被害を受けていました。このおばあちゃんのご自宅も、震災時の津波と今回の台風とで被害を受け、床のフローリングがはがされたままでした。私たちはなんとか物干しざおを直そうとしてみましたが、どうしても元通りにすることができず、部屋に臨時でぶら下げたひもに洗濯物を干すことしかできませんでした。大したこともできず、お役にたてずに申し訳ないと思っていた私達におばあちゃんは「ありがとう。お茶でも飲んでいらっしゃい。」と声をかけてくださり、わざわざお茶とヨーグルトを出してくださいました。それを食べながら、おばあちゃんのご家族のことや、震災の時のことを話してくださいました。その時におばあちゃんが何度も言っていた言葉が『感謝』という言葉。「津波で亡くなった友達や家を流されてしまった友達がいる、だから命があって家もある私は神様に感謝している」「主人が理解があって、いい人だから、私は幸せに暮らしてこれた。だから主人には感謝しているの」おばあちゃんが話してくださることの最後には、必ずと言っていいほど感謝の言葉が並んでいました。もっとお話ししたいと思いましたが、その日は次の作業があったため、おばあちゃんとあまり長くお話はできず、お別れをしました。

  その日の夜、私達がそのおばあちゃんのことを話したところ、塩釜ベースにいらっしゃったブラザーのはからいで、次の日の夜にもう1度おばあちゃんのお家にお邪魔することになりました。私と母がおばあちゃんのお宅につくと、なんと天ぷらとお赤飯を用意して待っていてくださったのです。「あなたたちが来るっていうから、ご飯用意して待っていたのよ。」と言ってくださり、前の日よりももっとたくさんのお話をすることができました。この日もおばあちゃんは感謝の言葉を何度も繰り返していらっしゃいましたが、震災と台風で被害を受け、辛い思いをされているはずのおばあちゃんが、あたりまえのように何事にも感謝することを忘れずに過ごしていらっしゃる強い姿を見て、ボランティアとして塩釜に行き、誰かの力になれればと思っていたはずの私が、逆に元気や希望、そして心からの思いやりをいただいてしまいました。 満面の笑顔で私の手を握りながら「あなたたちに出会えたこと、感謝してるわ」と言ってくださったおばあちゃんの顔と、おばあちゃんのおいしいごはんの味は忘れられません。

10代 東京都在住 女性 

(特集-だれかのためにできること17 2011/10/21)

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