アーカイブ

1. 沖縄を旅して

 憲法改正、教育基本法改正などの動きが活発化し、また今夏自民党が衆議院総選挙で圧勝して、対抗すべき民主党が惨敗、憲法改正に加担しそうな現在の流れは、真に平和を望む者にとって、とても暗澹たる気持ちにさせらてしまいます。
 この秋10月29日に念願の沖縄を旅することができました。この日は偶然にも非暴力の平和運動をされている日本山妙法寺の木津上人が普天間基地で祈りを捧げている中、警察に不当逮捕された日でもありました。この逮捕による拘留は20日間続くことになりました。平和を願う人々への国家権力の圧迫を強く感じた出来事です。
 私は最初の一週間同じ沖縄にいて、数日間は沖縄警察前で抗議行動に参加ができました。せめて彼の苦しみの側にいることができたという気持ちでした。
 日米政府は戦後、沖縄に耐えがたい基地の重圧を押しつけ、犠牲を強要しつづけてきました。このことは単に日米関係、沖縄だけのことではなく私たち自身ことであると思います。沖縄の基地問題は日本の平和、世界の平和につながる問題だと思います。この秋、日米政府が新たに、基地再編成のうち今までの辺野古(へのこ)沖の海上案を撤回し、辺野古沿岸(陸上)案を発表しました。これは決して沖縄の基地負担の軽減にはなりません。おじい、おばあを先頭に、ジュゴンが生息する豊かな生態系の辺野古沖の基地建設を、命がけで死守してこられた沖縄の人々に、さらに追う討ちをかけるような提案です。
 彼らの基地を作らせない運動は、戦争に加担したくないという気持ちが強いと言います。沖縄戦の被害者としての傷が癒えないうちに、ベトナム戦争に出かけるための基地のある町に住んでいるということで、戦争に加担にしているという新たな苦しみ、大きな痛みを抱えることになったのです。
 この辺野古の闘いは、沖縄のガンジーと言われた阿波根昌鴻さんの非暴力による平和運動の精神が、脈々と受け継がれています。「大声を出さない」「手に何も持たない」「手を肩より上に挙げない」「座って話をする」など。
 また辺野古では次のような素晴らしい言葉に出会います。「戦争には勝者はいない。」「平和を守る闘いには敗者はいない。」「平和への運動で必ず勝つ方法がひとつだけある。それは勝つまで続ける。」
 私はキリスト者として「決してあきらめない」精神が光をもたらしてくれることを待ち望んでいます。厳しく暗い世の中、沖縄の旅で会ったおじい・おばあの笑顔、そしてひとりひとりとの出会い、そして手と手をにぎりあったつながりは、確かに光に通じるものでした。

(T.I. 男性 62歳)

(特集-闇の中の光 1 2005/12/23)

ページ上部へ戻る