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2. 環境開発サミット(2)

 1972年にストックホルムで開かれた国連人間環境会議の標語は「かけがえのない地球」だった。いま南アフリカのヨハネスブルグで行われている環境・開発サミットは「この地球を救え」の標語を掲げている。
 ストックホルム会議が、人間環境の危機を意識した「環境元年」であったとすれば、「環境30年」のヨハネスブルグサミットは「言葉から実行へ」と踏み出す、記念すべき年となるだろう。
 いま地球環境にとっての最大の問題は、ひろがる南北格差である。90年以来、毎年1千万人が貧困層に加わっている。また、地球上の11億の同胞が栄養不良の状態におかれ、15億の人が水不足に苦しんでいるのである。
 大気汚染や地球温暖化との闘いもさることながら、貧困の克服が焦眉の急なのである。発展途上国への援助がどうしても必要である。さればこそ、10年前のリオの地球サミットは、環境保護と社会的、経済的発展とが不可分なことを世界に示した。以後、環境と開発は切り離せない言葉となる。
 いま世界にひろがっている戦争とテロの恐怖も人間環境の敵であろう。ストックホルム会議のホスト国だった、スウェーデンの故パルメ首相が「戦争こそ最大の環境破壊である」とベトナムでの米国の攻撃を痛烈に非難したことを鮮明に覚えている。
 環境問題は、自然条件の維持、改善にとどまるものではない。それはやはり「人間環境」の問題だ。人間環境とは、人間の福祉にほかならない。



2002年8月29日 『東京新聞』「筆洗」欄

(特集-地球環境 2 2002/9/6)

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