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3. 禅宗の組織に倣う
『日本イエズス会士礼法指針』は日本に来る宣教師を対象にしたもので、日本宣教に大きく影響を与えた諸文書の中でも、最も重要なものの一つである。この書物は、一番大胆にヴァリニャーノが目指した方向を示し、日本の状況や考え・習慣に基づいて注意すべきことを述べている。例えば、以下のようなものである。
「ところでパードレが日本で、改宗とキリシタンの信仰において自分たちの志していることを実現するために、必要かつ重要なことの一つは、一方では権威を維持し、他方ではごく親しい態度を取りながら、日本人と付き合っていくことであり、それも両者の一方が他方を妨げることなく、各々がふさわしい持ち場を保てるために、両者が互いに助け合うよう調和させながら関わることである。そこでまず第一に、パードレやイルマン(修道士)が、この両者を、いい評判を保ちながら、しかも効果的に結び付けるために、気をつけなくてはならない方法について述べることにしよう。」
ヴァリニャーノは、この緊張感を含んだ関係を作るために、新しく形を作るより既成の形を取ることにした。
「このために、キリスト教の僧侶に当たるパードレやイルマンは、日本では全宗派のうちで重要なものとみなされ、また日本のすべての階層の人々と多くの接触を持っている禅宗の僧侶が占めている地位と、少なくとも同じ高さに置くことが好都合のように思われる」。
結果として禅宗の組織の枠組みを模倣することが検討された。その理由は、神父と修道士が「キリスト教の僧侶」であり、禅宗が日本において最も尊敬され、また一番広くいろいろな階級の人々と関係を持つ宗教と思われたからである。この選択の重大さについては特記すべきであろう。宣教師の目から見れば他の宗教は悪魔の組織だと見なされることが多い当時、その宗教の組織をとれば当然な結果として、その組織のメンバーやその組織の思想との誤解が生じることが、ザビエル時代の苦い経験からわかっていた。その点で、ザビエル自身が使い、捨てた方法をヴァリニャーノが見直したことになる。
「それゆえ、すべてのパードレは長老が一般に占めている地位に当たるであろう。そして地区長の地位にあるものは五山の五人の長老と同じ地位を持つことになろうし、日本の上長である者は、南禅寺の管長のもつ地位にあることになろう。」
(特集-ヴァリニャーノ 3 2006/10/13)