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8. 新しい一歩

 ヨハネスブルグ・サミットは、かならずしも成功したわけではありません。
 「ヨハネスブルク宣言」や『実施計画』が採択されましたが、その中の一番大きな失敗は、企業のfree marketingのように各国各企業の状況と動きに任せられたことです。
 このたび、途上国が先進国に、政府開発援助増額の国債目標の達成時期明示を求めましたが、その願いも実りませんでした。また途上国が、先進国『EU、米国、日本』に農水産物の輸出を妨げている農業補助金の再考を求めましたが、これも退けられました。
 環境面ではEUが、風力発電など再生可能なエネルギーの普及や期限目標の設定を強く主張しましたが、日本や米国、産油国を含む幾つかの途上国の反対でその提案が支持されませんでした。
 とはいえ、新しい一歩への芽生えも見られます。
 一番大きな進歩は、水と衛生施設に関するものと言えるでしょう。「安全な飲み水の確保ができない11億人以上の割合を2015年までに半減する」という水問題での目標。また、2015年までに「良好な衛生施設が使えない24億人の割合を半減する」という衛生施設についての目標・・・・これらが打ち出されました。
 EUが再生可能なエネルギーに関して出した提案は、全体会では支持されませんでしたが、この提案には、EU新加盟国と、アイスランド、ノルウェー、スイス、トルコや、ウガンダ、ニュージーランド、メキシコや中南米の国々が賛成しました。
 また、多くの国が新しい途上国支援プロジェクトを発表しました。
 アメリカは京都議定書批准を拒否しましたが、ロシアとカナダが批准の決意を表明しています。

 これからの課題は、ドイツのシュレーダー首相の発言のように、「グローバルな正義なしにグローバルな安定がありえ」ませんから、その正義の促進のために働くことは、残された大きな宿題と言えましょう。
 多くの国際的な自然保護団体は、持続可能なエネルギーの選択に関して、政府に次のように呼びかけました。「エネルギーは南北両方の経済社会発展に不可欠です。21世紀の夜明けにあってなお、私たちは基本的な最低限のエネルギーを享受できない人々が地上に20億もいるという事実を直視しなければなりません。同時に、私たちは気候変動という、人類全体の生存に対する最大の脅威に直面しています。気候変動は、持続的な開発そのものに深刻な脅威を与えています。南の開発途上国では殊に深刻で、それは地理的に気候変動に最も被害を受けやすいと共に、対処する上で社会的経済的に最も困難を抱えているためです。 次の20年に世界がエネルギーについてどういう選択をするかということが、これから先の何世代にもわたる人類全体の発展の方向性を決定することになるでしょう。」

 私たち一人一人に、課題が委ねられています。指導的立場にある各界・各グループのリーダーに期待するとともに、私たち自身、日常生活の中でできるところから具体的に行動していくことが、確かに必要とされているのです。

"Choose Positive Energy" 要約



(特集-地球環境 8 2002/10/18)

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