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9. イエズス会総長就任

 1965年5月22日、イエズス会総会はペドロ・アルペ神父を総長に選出した。聖イグナチオ・デ・ロヨラから28代目の総長である。
 ペドロ・アルペ神父は選挙にかかわった人々に挨拶したが、彼は単純に驚いていて、次のように尋ねただけであった。「それで今、私は何をすればよいか?」
 最初の記者会見から、アルペ神父はそのダイナミックな力とユーモアで、記者たちをひきつけてしまった。彼の姿勢は「対話」中心だった。宣教においても、学問的使徒職においても、あるいはキリスト教以外の無神論者たちとの関係においてもそうであった。人々を差別するような障害を克服するためには、対話が何よりも大切だと考えていた。世界中のイエズス会管区へのアルペ総長の旅が始まった。「私にとって総長の修練期が始まったばかりなんだよ」と彼はいつも言っていた。
 1965年、第二ヴァチカン公会議が終わった。公会議は世界に対し、教会の新しいビジョンを提供した。それは対話し、旅し、司牧し、世界に開かれている教会のビジョンである。しかし修道会という「枠にはまった」姿勢をとっているために、反論や反駁の姿勢を招いてしまった。・・・教会もイエズス会も内部危機を抱えていた。より大きな自由が取り入れられた。この「70年代」には、他の修道会や宣教会と同様に多くのイエズス会員が修道会を去った。この危機は成長のための危機と呼ばれた。しかしあまりにも多くの会員がイエズス会を去るので、残った会員の一人が驚いてアルペ神父に聞いた。「神父様、一体どうなるんでしょうか?」アルペ神父はいつものように微笑んで答えた。「心配することはないよ。最後に去る者が電気のスイッチを消したら良い。」この言葉には冗談がこめられている。アルペ神父が神と神の摂理に、全幅の信頼をおいていることがうかがわれる言葉である。「私たちはいつも神のみ手のうちにある!」・・・アルペ神父は希望を失うことなく、活動を続けていた。

(特集-アルペ神父 9 2006/7/28)

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