アーカイブ
3. 共に生きる
――パキスタンから――
11月、パキスタンに行ってきた。インド、中国、アフガニスタン、イランと接する国で、教会が過激なイスラム教徒に襲われたニュースは日本にも伝えられた。
ナジラとナシームという二人の若い女性に出会った。ナジラはカトリック・ラホール教区の青年司牧をフルタイムで担当する信徒。彼女は他の青年たちと一緒に、市内や村々でテゼの歌などを使った祈りの会を開いている。11月には青年による平和集会を企画し、1200人の青年が集まった。
ナシームは熱心なイスラム教徒。彼女とナジラは幼友だちで、二人は小さいころから同じ建物に住んでいる。壁ひとつで隔てられている両隣りだ。ナジラはまだ独身で、熱心なカトリックの大家族と住んでいる。一方ナシームは、二人の子どもの母親で、彼女の家族もまた大所帯だ。
二人は毎日のように会う。多くの物を二人の家族は分かち合い、料理はいつも隣りの家族へと分けられる。信仰の道こそ異なるが、誕生も結婚も死も、共に笑い喜び共に泣く。とうとう最近、二人が言い出して、この二つの家族は2階の壁を崩してしまった。訪ね合うのに、もう外を周る必要がない。
わたしはナジラの妹の婚約を記念するミサとパーティに招待された。ミサとパーティは家の前の路地をカーテンで仕切った場所でひらかれた。ナシームとその家族が2階のベランダからうれしそうにミサを眺め、ときどき手を振っている。そしてパーティになるとナシームが早速降りてきて、わたしたちに振舞ってくれるのだ。
過激な対立が伝えられる一方で、このような人々が生きている。互いに愛し合い助け合っているイスラム教徒とキリスト者がいる。
植松 功 (聖公会信徒、「黙想と祈りの集い準備会」)
(特集-コンパッション 3 2003/12/12)