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2. 現在の世界情勢に関する懸念
~ テロと報復の緊張が増している現実の中で世界の平和のためにともに祈りましょう。 ~
世界を驚かせた悲惨な事件から一週間が経ったが、まだ煙が消えず、多くの人々の痛みを私たちに言葉をなくさせたこのごろです。そこで、神学講座の初授業に代えてこの声明文を考える材料および祈りへの招きとして提供したいと思います。
- 多くの人のいのちを奪った行為を断罪し、それは断じてゆるされないことです。いのちを失った人々の冥福を祈り、その遺族に必要な力づけが与えられる ようにも祈りながら、「私たちはみな被害者である」という実感を持つと同時に「私たちはみな加害者でもある」という反省を心にとめておきたいものです。
- 今回の事件のような残酷な行為を予防し、犯罪者のこれからの新たな脅威を抑止するために、倫理的に認められるような適切な手段だけを使って国際的に力を合せて防衛対策に努めなければなければならないのです。
- しかし、「報復精神」、「復讐精神」、「報復行為」、「暴力の波紋を広げる軍事行使」などはキリスト教の立場に立ってどうしても認められないことを宣言する必要があります。
- 現在の事件が世界全体におけるグローバルな不正状況から由来するということについて深く反省を行わなければなりません。
- 難民をふくめて多くの民間人が大掛かりな戦争の被害者になってしまうことを避けるべきです。原子爆弾の被爆者である日本国は特に報復行為に反対し、軍事行使へのあらゆる協力をことわるべきです。
- 諸宗教が心と力をあわせて平和を訴え、「報復精神」に対して強い反対を宣言し、世界指導者たちに向かって慎重な態度を取るように訴えると同時に、人々の心からあらゆる憎み合いをとりのぞくために働きかけるのは緊急な課題です。
- 以上はキリスト教倫理の立場から述べましたが、その倫理観の要点を手短にまとめれば次の通りです:
イ)希望をもって生きること、 ロ)他者と共に生きること、 ハ)自分とは違う者とともに生きること、 ニ)弱い者を犠牲にせず、弱い者を優先して共に生きること。 - この四点についてイエスの福音に基づいた倫理観、および平和への問いを追求したいと思います。(マタイ26・52-53、ルカ9・51-55、マタイ13・28-30 etc.)
合掌
上智大学神学部 ホアン・マシア教授
(特集-平和アピール 2 2001/10/5)