祈りと生活
祈りの道すじ
祈りには様々な祈り方があります。[日曜日の聖書]や[毎日の祈り]のみことばを祈る時も、自分に合った祈り方を見つけるとよいでしょう。ここでは、一つの祈り方を紹介しますが、助けになればこの道すじをたどって祈ってみることもできます。
1.祈りの準備- みことばをゆっくり2~3回読んでみます――どんな言葉や情景が心に響くでしょうか。心が動くところ、祈りたいと思う箇所に心をとめ、それを今日の祈りの材料にします。
- そのみことばと今の自分の生活状況を重ねてみて、私はどんな恵みをいただきたいと思うでしょうか。それを祈りの意向として意識しておきましょう。
- もし朝起きてすぐに祈りたいならば、この祈りの準備を前の晩にして、心に響いたみことばといただきたい恵みを思いめぐらしながら休むと、朝目覚めてすぐ祈りに入るのに助けとなるでしょう。
- 祈る場所を決めてそこへ行きます。 自分の部屋、庭、通り、公園、教会の聖堂…… どこでも構いませんが、自分にとって心が落ち着き、祈りやすい場所を祈りの場とすることが大切です。 部屋の一隅にローソクや聖書、御絵などを置いて、祈りの場を作ることもよいでしょう。 もちろん、その日によって祈る場所を変えることもできます。 ・祈りやすい姿勢をとります。リラックスしていながらもほどよい緊張感のある姿勢をとり、背筋を伸ばし、肩の力を抜きます。
- 呼吸に意識を集中したり、周囲の音に耳をかたむけたり、体の各部分の感覚を感じてみるのも、心を落ち着かせ、静けさに入っていくための助けとなります。
まず、はじめの5分間、体のあちこちの部分の知覚を意識します。 次に呼吸に移り、これを意識してください。鼻孔をとおって入ってくる空気、出て行く空気を意識します。肺の中に入っていく空気に注意を集中するのではありません。空気が鼻孔をとおるときにのみ注意を向けます。 呼吸は不自然にコントロールせず、無理に深く呼吸しようとせず、自然のままにしてください。これは呼吸のエクササイズではなく、知覚のそれです。浅く息をする性の人なら、普段のままにおこなってください。日常のペースをそのままにおこなってください。息を観察するのです。 このエクササイズにとりかかるまえに、ただ一つの呼吸も逃さず知覚するぞと固く決心すれば、大いに助けになります。 |
目は閉じてください。親指で両耳をふさぎます。目は手のひらで軽く覆います……。 今、まわりの音は何も聞こえていないはずです。息を聞きます……。 10回ばかり呼吸を聞いてから、静かに両手をひざの上に置きます。目は閉じたままにしておきます。まわりの物音すべてを聞きます。さまざまな音が聞こえます。大きな音、小さな音、近くの音、遠くの音……これらに注意深く耳を傾けてください……。 しばらくそうしてから、注意して音を聞いてください。これは足音、あれは時計のチクタクという音、そしてそれは車の警笛などと識別せず、ただ音を聞くのです。あなたをとりまく音の世界を一つの全体として聞くのです……。 |
両肩の力を抜き、くつろいだ姿勢をとってください。目を閉じます……。 体の各部分を知覚します。現在あなたは、体の各部分の感覚をうすうす感じてはいるものの、はっきりと明瞭に気づいてはいないのです……。 肩に触れている衣服を感じてください……背中に触れている衣服を感じてください……背中が椅子の背に触れていることに気づいてください……。 互いに触れ合っている両手、ひざの上においている手を感じてください……。 椅子に押し当てられている腿とお尻を意識します……靴に触れている足を感じます……。 座っている今の姿勢にはっきりと気づいてください……。 はじめから繰り返します。肩……背中……右手……左手……右腿……左腿……足……座っている姿勢……。 もう一度繰り返してください。肩……背中……右手……左手……右腿……左腿……右足……左足……座っている姿勢……。 ……体のある部分から、他の部分へと動きながら、自分一人で続けてください。各部分にはほんの数秒だけ留まります。肩、背中、腿と次から次へと動きつづけてください。 指摘した部分だけでなく、頭、首、胸、腹など、他の部分を順を追って感じても結構です。 肝心なのは各部分について感覚を得ること、体の各部分、部分を感じることです。 ・心を静めながら、神がここに共にいてくださること(神の現存)を意識します。 ・祈りの準備の時に意識した意向(求める恵み)をいただけるよう、神に願います。 |
準備のときに選んだ祈りの材料 ―みことば― を心の中で繰り返したり反芻したりしながら味わいを深め、そこから生じてくる心の動き(気持ち)を味わいます。それによって神の働きを感じとるようにして、それをゆっくり味わいます。(神は、私たちの心の動きを通して、働きかけておられます。) 祈りが終わりに近づいたころ、この祈りの間に味わったこと、気づかされたこと、感じたこと、また様々な思いや願いなど、ありのままを神に話します。そして、それに対して神がどのように応えてくださるか聞くようにします。あるいは、言葉なしに、ただ沈黙で神の内に留まるのもよいでしょう。
4.祈りの振り返り- 祈りを終えた後、場所や姿勢を変えて、今の祈りを振り返ります。 ・全般的に、祈りはどうだったでしょうか? 神を身近に感じたでしょうか? あるいは祈りが難しかったでしょうか?
- どのような気づきや心の動きがあったでしょうか? 喜び? 平和? 静けさ? あたたかさ? 悲しみ? 怒り? そわそわ? 空しさ?‥‥‥ ・それらを通して、神は私にどのように働きかけ、呼びかけてくださったのでしょうか? それに対して私は喜んで応えようとしたでしょうか、あるいは避けたいという思いだったでしょうか?
- 祈りに集中することができたでしょうか? できなかったとすればその原因はどこにあったと思いますか? ・祈りを通して何か学んだことがあったでしょうか? 必ずしも、これらのポイントの全てに答える必要はありません。特に印象深かった点や心に残っていることについて振り返ってみましょう。そして振り返ったことを簡単にノートに書きとめておくとよいでしょう。一週間あるいは二週間ごとにノートを見ながら自分の祈りを振り返ると、祈りに一つの流れができていることがあります。 30分祈るとすると、その準備と振り返りにそれぞれ5分ぐらい費やします。(1時間の祈りなら、それぞれ10分~15分当てるとよいでしょう。)
祈り終わって、何らかの霊的な感動、心が深く動かされたり、もっと味わいたいと思うところ、あるいは、気になるところ、ひっかかるところなどは、次の祈りでもう一度、祈ってみるとよいでしょう。そして、そこを重点的に味わい深めてみましょう。その場合、前に祈った聖書箇所全体をはじめからもう一度繰り返したり、何か新しいものを探す必要はありません。 このように祈りを反復することによって、祈りが深められていきます。
枠内: アントニー・デ・メロ 著 / 裏辻 洋二 訳 「東洋の瞑想とキリスト者の祈り」 女子パウロ会より
(生活の霊性-生活の霊性 2)