こころの散歩
「ユダ」のモデル
「ユダ」のモデル
レオナルド・ダ・ヴィンチが、「最後の晩餐」を描いていた時の逸話である。レオナルドは、ピエトリ・バンディネッリという魅力的な青年を、キリストのモデルに選んだ。
絵の完成には何年もかかった。ユダの部分が最後に残り、レオナルドはあちこちの酒場や町のいかがわしい地区を、「ユダ」のモデルを捜して歩いた。
彼は画家特有の鋭い洞察に満ちた目で、ユダの人となりを表すにぴったりの人物を物色した。
そしてついに、退廃的で放蕩が顔つきににじみ出た感じの、どこからみてもモデルとして完璧な男をみつけた。絵を描き始めてしばらくしたころ、レオナルドはどうもその男に見覚えがあるように思われたので、どこかで会ったことがあるか、と訊ねた。
「ええ、会いましたよ。でも、あれからこっち、いろいろありましてね。」
男はバンディネッリと名乗った。もう何年も前にキリストのモデルをした・・・と。
画: レオナルド・ダ・ヴィンチ