こころの散歩
「皆さん、飲んで下さい」
「皆さん、飲んで下さい」
友人が、神戸の震災のときの出来事を話してくれました。
体重47キロの友人は、脳溢血のため半身不随で寝ていた70キロ以上もあるご主人を、マンションの12階から1階まで背負って降りました。
そのときに、たまたま前日に買って玄関に置いてあった、水の入ったペットボトルを持って降りたそうです。
下へ降りると、今まで口をきいたこともないマンションの住人がみんな寄ってきて、
「二人とも生きてましたか。よかったですね」と、わがことのように喜んでくれたそうです。
彼女は12階から降りてくるまでにのども渇き、水の大切さを身にしみて感じているにもかかわらず、そのとき自分にとって命の次に大切な水を、
「皆さん、飲んで下さい」と、差し出したそうです。
彼女は、「あれを自分がどうして差し出せたのか、今でもわからない」と言っていました。
鈴木 秀子 著 「今日幸せになる171の言葉」(海竜社)より
画: 松村 美智子