こころの散歩
あなた自身のきずの中に
あなた自身のきずの中に
カール・G・ユングは、あるクリスチャンに書きました。
「あなたがたクリスチャンには、非常に美しいものがあります。あなたがたは飢えている人、渇いている人を見るとき、そこにイエス・キリストを見ていますね。路上の裸の人に衣服を着せるときも、その人にキリストを見ています。牢獄の囚人を訪ねたり、入院中の病人を見舞うときも、キリストを見ているでしょう。そして、見知らぬ人を喜んで歓迎するときも、やはりキリストを歓迎しているのです。
しかし、私が理解に苦しむのは、あなたがたが、自分の内にある貧しさを見ようとしないことです。あなたがた自身の心の破れの中に、イエスがおられることを見ないことです。
なぜ外側にばかりイエスを見、自分の内側に見ようとしないのですか。あなたの中の弱さや破れ、そのすべてにイエスがおられるのに、どうして見えないのでしょうか。あなたがたが、自分の内の暗い世界を歓迎できないのは、どうしてでしょう。そうすれば、光が闇に差し込み、光は闇の中で輝くでしょうに。
あなた自身の中に、飢えている人、渇いている人がいるのに気づきませんか。囚人がいるのに気づきませんか。恐れや不安という牢獄に閉じ込められた囚人がいることに。
またあなたは、自分の中に見知らぬ人がいるのに気づきませんか。自分のしたいことを行なわず、自分にも理解できないことをしてしまう、奇妙な人のことです。次々にあなたを襲う怒りや憂うつも、どこからやって来るのかわからない風来坊ではありませんか。
あなたがたは自分の中に、病んでいる人がいるのに気づきませんか。裸で、貧しく、傷ついている人、衣服を着せてあげるべき人のいることがわかりませんか。あなた自身の弱さや破れの内に、キリストが隠れておられるのが見えませんか。」
ジャン・バニエ 著 / 長沢 道子 訳 「小さき者からの光」(あめんどう)より