こころの散歩

ある活動家

ある活動家

 あるところに仕事中毒の男がいました。男は貴重な人生の一瞬たりとも無駄にするまいと励んでおりました。
 町に出かけると、その道すがらどの店で買い物をしようかと計画を立て、店に入ったとたんに、どこを散歩しようかと計画を立て、散歩をしながら、どこで食事をしようかと計画を立て、メインディッシュを食べながら、デザートは何にしようかと考え、デザートを食べながら、どのバスで家に帰ろうかと時刻表を調べるのでした。
   さてある日、男は準備したことのないものに出くわすことになりました。それは死でした。男はまさに死なんとした時、自分の人生は何と空っぽで意味のないものであったかに気づき驚愕しました。男は“今を生きていなかった”のです。

“Willi Hoffsuemmer”より
写真: 中司 伸聡
  

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